顔をなでたり、手を握ったりしたかった…コロナ死者の葬儀制限緩和、遺族は複雑な思い 「もっと早く見直してくれたら」

 2023/01/07 08:25
新型コロナウイルスを密閉する非透過性の納体袋。指針改正で不要になった=姶良市の天国葬祭
新型コロナウイルスを密閉する非透過性の納体袋。指針改正で不要になった=姶良市の天国葬祭
 新型コロナウイルス感染者の遺体や葬儀に関する指針を厚生労働省が改正し、制限は大きく緩和されることになった。「家族の希望に沿う形で見送れるようになる一歩」。コロナで母親を亡くした鹿児島県内の遺族は制限緩和を歓迎しつつ、満足な別れができなかったことで喪失感は深く、「もっと早く見直せなかったのか」と複雑な思いを抱く。

 「顔を見られたのは病院でのほんの数分だけ。本当なら顔をなでたり、手を握ったりしながら、家族みんなで最期をじっくり過ごせたはずなのに」。76歳の母親を昨年8月に亡くした女性(48)は「悔いだけが残り、気持ちの整理がつかない」と胸の内を明かす。

 介護施設に入所していた母親は、持病の悪化で入院中にコロナ感染が判明した。「状態が悪い」と医師に告げられ、そばでみとりたいと望んだが、感染でかなわなかった。「施設入所中も感染対策で数えるほどしか会えなかった。最後までどうして」。数日後に死亡の連絡を受け、深夜の病室で防護服を着て対面した。

 火葬まではあっけなかった。遺体は葬儀場で預かってもらえず、亡くなった翌日夕方に火葬場へ直行。霊きゅう車を車で追いかけた。「納体袋に入っているので顔は見えません」。テープで目張りされたひつぎは小窓が開けられることもなく、火葬炉へ入っていくのをぼうぜんと見つめた。

 息を引き取ってから火葬されるまでわずか21時間。関東で暮らす妹家族は、遺骨との対面しかできなかった。「世間はウィズコロナが進んだのに、感染して亡くなった人の対応は取り残され、母を1人で逝かせてしまった」と心の痛みは癒えない。感染拡大で死者が再び増える中、「できる限りの見送りができたと遺族が納得できる対応をしてほしい」と切実に語る。

 県内の複数の葬祭業者によると、感染者が亡くなるとこれまでは病院などで納体袋とひつぎに納め、葬儀はせずに火葬場へ直接搬送する場合がほとんどだった。病院によっては病室や霊安室で故人と対面ができず、顔を全く見られないままのケースもあった。

 厚労省が2020年7月に示した指針は2年半の間、一度も改正されなかった。ある葬祭業者の担当者は「ワクチン接種や治療方法は進歩し、業界の対応ももっと早く変えた方が良かった。これまでは遺体の引き取り自体を敬遠する業者もあった」と明かす。

 県葬祭業協同組合の米丸五男理事長(78)=姶良市の天国葬祭社長=は「葬儀をしたり、ひつぎに思い出の品や花を入れたりすることは、大事な人の死を受け止めるのに必要な時間。残された人が十分な別れができるよう努める」と話す。