人より牛が多いのに…地場産牛肉が出回らない島「経産牛をブランド牛に」 再肥育で食べやすく、濃厚なうまみ

 2023/01/08 11:55
経産牛を再肥育する原田諭さん=与論町朝戸
経産牛を再肥育する原田諭さん=与論町朝戸
 畜産が盛んな鹿児島県与論島で、再肥育した黒毛和種の経産牛を「ヨロンアイランドビーフ」と名付け、ブランド化する取り組みが進んでいる。脂身がしつこくなくて食べやすく、濃厚なうまみと甘みが売りだ。生産者らは「加工品として販売し、島内外で消費できるようにしたい」と意気込む。

 島内266戸が牛5768頭(2022年2月)を飼育。人口5081人(同11月)より牛の数が多い。子牛を育てて島外へ出荷する繁殖農家がほとんどで、地場産の牛肉は島内に出回らない。ブランド牛の素牛として子牛の評価が高い一方、子牛を10年以上産んで役目を終えた母牛の価値は低いとされていた。

 農家原田諭さん(38)=朝戸=は15年から経産牛の再肥育を始めた。餌をしっかり乾燥させたり、サトウキビの苗を与えたりと試行錯誤。「うまみが多く、食べやすかった」と手応えを得た。

 島内外で飲食店を営む沖隆寿さん(39)=茶花=が再肥育化の話を聞き、「与論の牛をブランド化し、食べられるようにしたい」と原田さんに相談。クラウドファンディングなどで資金を募り、事業所を立ち上げた。

 現在、30代が中心の6農家が生産する。22年秋から県内のAコープでアイランドビーフ入りのレトルトカレーを販売。ふるさと納税返礼品や島内外二十数カ所の飲食店でアイランドビーフを使った商品を提供する。

 今後、さらなる加工品の開発や販路拡大を目指す。原田さんは「与論の牛のおいしさを知ってもらい、将来は島の農家に利益を回せるようにしたい」と話した。