免疫を獲得?ツル同士のインフル流行落ち着く ウイルス学者「第2波の恐れも」 出水

 2023/01/08 10:08
【資料写真】荒崎休遊地の上空を飛ぶツル=7日午前7時40分ごろ、出水市荘
【資料写真】荒崎休遊地の上空を飛ぶツル=7日午前7時40分ごろ、出水市荘
 鹿児島県の出水平野で死んだり衰弱したりしたツルの回収羽数が、昨年12月下旬から激減している。ピーク時は1日90羽以上回収されたが、10羽に満たない状況が続く。高病原性鳥インフルエンザウイルスの検出割合も減っており、専門家は今季の特徴であるツル間の流行が落ち着いたとみる。一方で、ウイルスを運ぶカモ類の飛来は今後も続くとして「予断を許さない状況」と警戒を呼びかける。

 今季は11月1日に東干拓で衰弱したナベヅルが初めて回収されてから急増し、同18日には92羽に上った。1月5日時点で累計の回収羽数は1365羽で、例年の10倍以上。出水平野に今季飛来したツルの1割以上が死んだことになる。

 回収したツルの遺伝子検査では、12月初旬まで9割以上の高い割合で高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出された。ツル同士の飛沫(ひまつ)感染が拡大の要因とみられている。その後は徐々に減少し、同月20日以降は約1割にまで低下した。検査数の急増で、県は5~10羽のうち1羽程度を選ぶ抽出検査に一時移行。回収羽数が減った12月下旬からは再び全数検査に戻っている。

 ウイルス検査に携わる鹿児島大学共同獣医学部の小澤真准教授=ウイルス学=は、出水平野に飛来したツルの一部が免疫を獲得した可能性を指摘する。ただ、ねぐらの水からは定期検査で高病原性の検出が続いている。冬本番に向けてしばらくカモ類も飛来するとし、「別の遺伝子系統があるウイルスが運び込まれれば、感染の“第2波”がくる恐れもある」と警鐘を鳴らす。