取って飾れば家内安全…曽於で奇習「鬼追い」

 2023/01/09 07:00
御幣をかぶって熊野神社周辺を暴れ回る鬼=7日午後8時20分、曽於市末吉町深川
御幣をかぶって熊野神社周辺を暴れ回る鬼=7日午後8時20分、曽於市末吉町深川
 鹿児島県曽於市末吉町深川の熊野神社に伝わる正月行事「鬼追い」が、7日夜あった。1年の無病息災とともに、新型コロナウイルスの収束と、ウクライナ戦争の終結を願った。

 午後8時、花火を合図に神社のかねが打ち鳴らされると、御幣を身につけた鬼3匹が次々に堂から飛び出した。階段を駆け下って参道の仁王像まで走り、神酒を飲んだ後、暗がりの中で神社一帯を暴れ回った。

 見物人は御幣をむしり取って飾ると家内安全のお守りになるとあって必死。しかし、鬼の手でたたかれる人、勢い余って転ぶ人など、一帯は興奮状態に。鬼と見物人の攻防は40分ほどで終わった。

 実行委員の吉永辰美さん(80)が今年も進行役を務め、鹿児島弁で祭りを盛り上げた。見物に訪れた同町岩崎の中堂薗亮さん(30)は「この1年、家族が元気に過ごせれば」と話した。

 末吉郷土史によると、鬼追いは大正時代の初期ごろまでは各地で行われていたが、その後廃れたという。現代では深川だけに残り、奇習として知られる。県無形民俗文化財。