馬毛島基地着工「住民をばかにしている」「地元の民意を無視したやり方」 反対派が抗議集会 市民に諦めムードも

 2023/01/13 07:18
計画の白紙撤回を求める反対派の住民ら=12日、西之表市
計画の白紙撤回を求める反対派の住民ら=12日、西之表市
 防衛省は12日、鹿児島県西之表市馬毛島への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転を伴う自衛隊基地整備計画で、環境影響評価(アセスメント)の最終まとめとなる「評価書」を公告し、基地本体工事に即日着手した。

 市街地では作業員を乗せたレンタカーが行き交い、重機やトラックを次々に台船に運ぶ様子が見られた。市民からは「国の決定に地元が反対しても…」と諦めに似た言葉が漏れた。

 無職中野良盛さん(74)は「国は一方通行で、納得できる説明もなく進めていく。どうしようもない」。40代女性は「国は進める以上、防犯カメラの設置など市民の安全確保を徹底してほしい」と訴えた。

 ほかにも「国は形式的な手続きだけでなく、住民の声をもっと聞くべきだ」「利益を得るのは一部の人だけ」といった声が上がった。

■白紙撤回求める決議

 市民団体「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」は12日午後、市内で抗議集会を開いた。約60人が参加、作業員が渡った馬毛島を向きながら「基地建設、断固反対」「平穏な生活を壊すな」とシュプレヒコールを上げた。

 着工は環境影響評価(アセスメント)評価書の公告後、間もなく始まった。同会の山内光典会長(72)は「ほとんどの市民がまだ評価書を縦覧していない。地元の民意を全く無視したやり方だ」と語気を強めた。

 無職川原孝子さん(72)も「住民に説明もなく着工するのはばかにしている」と憤る。「ウクライナの状況を考えれば、一番怖いのは戦争につながること。武力でなく外交で解決してほしい」と訴えた。

 集会では、計画の白紙撤回を求める決議を取りまとめ、事業者の熊本防衛支局長宛ての文書を九州防衛局種子島連絡所に提出した。

■賛成派

 環境影響評価(アセスメント)の評価書が12日午前9時に公告されると、西之表市の住吉漁港から作業員を乗せた船が早速、馬毛島に向かった。計画賛成派は「ようやく前に進んだ」と表情を和らげた。

 政治団体「西之表市と馬毛島の未来創造推進協議会」で、事務局長を務める杉為昭市議(56)は「市長も現実を直視し、前向きな姿勢で国と協議すべきだ」と指摘。市民に航空機騒音などの懸念が根強いことから、「国は最大限の不安解消の努力を」と注文した。

 2021年の市長選で、計画賛成を掲げて立候補した市商工会の福井清信会長(73)は歓迎する一方、工事関係者の急増を懸念。「飲食店を中心にしっかり対策を取りたい」と話した。