林立する作業員宿舎、行き交う重機…早期運用へ準備周到 上空から見えたのは防衛省の「意思」 「重い十字架」背負った不沈空母で自衛隊基地工事が始まった【馬毛島ルポ】

 2023/01/13 10:00
訓練基地建設が着工した馬毛島。画面奥は種子島本島=12日午後1時45分、西之表市の馬毛島(本社チャーター機から撮影)
訓練基地建設が着工した馬毛島。画面奥は種子島本島=12日午後1時45分、西之表市の馬毛島(本社チャーター機から撮影)
 長年多くの思惑に翻弄(ほんろう)されながら、米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地の整備地に正式決定してわずか1年。鹿児島県西之表市の馬毛島は、今後4年ほどで恒久的な自衛隊基地へと姿を変えていく。地域浮揚は。暮らしへの影響は-。巨大事業によって訪れる急速な変化に、市民には期待と不安が入り交じる。

 米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画で、基地本体工事が始まった12日、馬毛島を上空から見た。「着工」とはいえ、港や道路の整備は昨夏から続き、周囲16.5キロの島は刻々と姿を変えていた。

 午後2時半、島東部の葉山港にショベルカー2台を積んだ台船が入ると、スイッチが入ったように人や車が慌ただしく動き出した。

 港のそばには作業員用の2階建て宿舎4棟が建っている。優に数百人は入れそうな規模で、さらに増築される。重機や車もあちこちにあり、砂利道を行き交っている。防衛省の準備の周到さ、早期運用への「意思」を感じる。

 島の全景を見ると、東西南北を貫く十字の「滑走路」がひときわ目立つ。大半を所有した会社が2005~11年ごろにかけて造成し、米軍機訓練を誘致した。

 かねて「不沈空母」と形容されてきたが、重い十字架を背負ったようにも映る。計画では別の十字に滑走路が敷かれ、管制塔や駐機場、港湾施設が立ち並ぶ。わずかに残る緑地や白い砂浜も、日米の「訓練地」となる。規模の大きさに想像が追い付かなかった。

 対岸の西之表市に旋回すると小型機で数分ほど。ないと信じたいが、米軍機のトラブルは全国で相次ぐ。闇夜で繰り返す離着陸訓練の騒音も本当に耐えられる程度なのだろうか。空路で本土までは数十分だった。基地計画は、実はすぐそばで進んでいると実感した。