4年で1100万立方メートルもの土砂を掘削…馬毛島で始まった巨大基地工事、環境への影響は?

 2023/01/13 17:00
訓練基地建設が着工した馬毛島。画面奥は種子島本島=12日午後1時45分、西之表市の馬毛島(本社チャーター機から撮影)
訓練基地建設が着工した馬毛島。画面奥は種子島本島=12日午後1時45分、西之表市の馬毛島(本社チャーター機から撮影)
 防衛省が12日に始めた鹿児島県西之表市馬毛島の基地本体工事は4年にわたる巨大事業で、丘の掘削や海域の埋め立てによる周辺環境への影響が懸念される。専門家は「影響を外部もチェックできる体制づくりが重要だ」と指摘する。

 同日公告した環境影響評価(アセスメント)の評価書によると、陸上工事は森林伐採や用地造成から着手する。重機を搬入し、標高71メートルの岳之腰を中心に約1100万立方メートルの土砂を掘削して平坦にする。海域では、島東岸の仮設桟橋や防波堤の基礎工事を始める。

 1年程度で仮設の燃料タンクやプラントが完成。約2年後には2本の滑走路と航空保安施設ができ、米軍機訓練が始まる可能性がある。3年ほどで大半の施設の建設が終わり、仮設桟橋などの撤去を始める予定。

 4年間の工事で発生する一般廃棄物は37トン、産業廃棄物は4180トン。土砂や化学物質による水質への影響も局所的に起こると予測される。県アセス専門委員の冨安卓滋・鹿児島大学大学院教授(環境分析化学)は「一定以上の雨量があった場合などに調査し、どのような状態になったら専門家に相談するかを明確にして」と求める。公告直後に着工したことは、「地元の懸念は大きいのに、誠実に向き合う姿勢が足りないと感じる」と批判した。

 アセス制度に詳しい沖縄大の桜井国俊名誉教授(環境学)は2021年2月の方法書公告からの早さに注目する。「全ての項目で十分な調査はできない期間。着工を13日の日米首脳会談での手土産にしたかったのだろう」と疑う。今後について、「アセスでは出なかった問題が浮上する。市民と自治体が連携して防衛省に情報公開をさせる姿勢が重要だ」と話した。

 評価書は2月13日まで、九州防衛局ホームページや県庁、種子島3市町役場などで縦覧できる。