馬毛島基地に注がれる防衛マネー。事業分割で地元業者に気を使う防衛省。だが人や資材確保は大手ゼネコン頼り。「足元見られ、うまみ吸い取られる」
2023/01/17 11:00

台船に積み込まれる重機=西之表市の西之表港
「どれぐらいの規模の工事なら受注できるか。教えてほしい」。昨年2月、西之表市の県建設業協会種子島支部。同市馬毛島の自衛隊基地整備を巡り、集まった地元の16社に防衛省職員が投げかけた。
その2カ月前、同省は2022年度当初予算に馬毛島整備費3183億円を計上していた。「3000億円」は近年の県内全体の公共建設投資額に匹敵する。この時期から「着工」に向けた水面下の準備が加速度的に進んでいた。
特に港湾や滑走路の段取りは周到だ。施工計画などを算出する「詳細検討」について、港湾は21年12月に、滑走路は22年5月に大手ゼネコンら共同企業体(JV)6社と随意契約。工事もこの6社が計約1680億円の随契で請け負った。
さらに冒頭の「聞き取り」の通り、事業が大手に偏らないように分割。12月末までに種子島支部の業者単独で9社35億円を契約した。関係者は「地元業者にこれだけ気を使う事業はない。昨年11月の知事容認よりずっと前から、工事は進んでいる」と話す。
■□■
防衛省は補正予算で1441億円を、23年度当初には3030億円の整備費を追加した。低迷が続く業界にとって、巨額が次々と盛られる防衛マネーは渡りに船。県建設業協会の藤田護会長は「前例がない規模の国家プロジェクト。経済効果は計り知れない」と歓迎する。
ただ、必ずしも順風ばかりではない。折しも熊本で、台湾の世界的な半導体メーカーの工場建設という国家事業が進む。かねて少ない建設従業員の確保は大激戦の様相だ。馬毛島は離島の離島、防衛施設という特殊性が加わり、人手を集めるのは容易ではない。
ある業者は声を潜める。「馬毛島事業で年間売り上げ以上の契約をした会社も多い。人や資材の確保はスーパーゼネコン頼りで、結局は足元を見られ、うまみを吸い取られてしまう」
■□■
防衛省が馬毛島整備の環境影響評価(アセスメント)の評価書を公表した今月12日。西之表港では馬毛島へ向けた台船に重機が積み込まれていた。「今後、全国から重機が集まってくる」と男性作業員は言う。
同日、防衛省と連携する国交省は県に鹿児島港の使用許可を申請した。目的は工事の資材置き。関係者によると、県内の主要港などで部材製作や搬出が見込まれる。基礎となるコンクリートブロックだけでも、数トンから90トンのものが5万個以上造られるという。
県内の大手業者は、4年程度とされた馬毛島整備の工期に「普通なら8年かかる」と驚く。「24時間態勢で造らないと、とても間に合わない。何が起きるのか読めず、未知の領域だ」
あわせて読みたい記事
-
包丁持って郵便局へ 「金を出せ」5万5000円奪う 自転車で逃走、15分後に現行犯逮捕 都城3月31日 10:50
-
鹿児島県議選が告示、定数51に77人が立候補届け出(午前9時現在) 4月9日投開票3月31日 10:16
-
南日本文学賞贈賞式 小説・馬場さん「創作は充実した青春」 詩・栫さん「選評から光が見えた」3月31日 10:14
-
桜眺め茶人・島津義弘しのぶ 野だて茶会や歴史トークショーも 加治木で「扇和宴」3月31日 10:00
-
廃棄物の抑制で連携協定 循環型社会の実現目指す 「暮らしと自然守る」 屋久島町と2企業3月31日 08:30
-
馬毛島で見つかった旧石器時代の「八重石遺跡」 基地工事進める防衛省に発掘調査を勧告 鹿児島県教委3月31日 08:27
-
新緑の中、活気づく 一番茶摘み始まる 生産量日本一の鹿児島・南九州市3月31日 07:32