28年前、阪神大震災の避難所…冷えたご飯、たまるストレス、けんかで警察出動 支援経験した鹿児島大教授の提言とは

 2023/01/17 07:32
被災経験のある都市との連携強化を提言する宇那木正寛教授=鹿児島大学
被災経験のある都市との連携強化を提言する宇那木正寛教授=鹿児島大学
 6434人が死亡した1995年の阪神大震災から、17日で28年になる。当時、岡山市職員だった鹿児島大学の宇那木正寛教授(行政法)は被害の大きかった神戸市長田区に3週間ほど派遣され、被災者支援に当たった。その経験から、避難所において「プライバシー確保など精神面での対応も重要」と話す。災害に備え、被災自治体との連携も提言する。

 岡山市は神戸市からの要請で、交代で支援要員を派遣していた。宇那木氏が現地入りしたのは、発生から1カ月ほどたった2月末。建設途中の公営住宅に身を寄せた被災者の世話に当たった。高齢者を中心に50〜60人が避難しており、宇那木氏を含め職員3人で対応した。配給物資の配布、区役所へ不足物品の要望伝達、仮設トイレの掃除など仕事は多岐にわたった。

 食料や水は避難所へ届いたものの、中身は冷え切ったご飯やあんパンなど。「被災者の食は進まなかった」と振り返る。ストレスがたまり、同じく他の自治体から派遣されていた職員とけんかになって警察が出動したこともあった。

 要望が多かったのが、プライバシー確保のための段ボール。下に敷く分だけしか用意できておらず、隣とのスペースは区切られていなかった。

 現在は鹿児島でも避難所のパーティションや授乳用テントなどの配備が進んできたが、「引き続き、物的、精神的の両面から迅速かつ的確に対応する必要がある」と強調した。

 阪神大震災以後、長期的に公共事業が減少傾向にある一方で国土強靱(きょうじん)化などインフラ整備を中心に防災・減災の取り組みが進んできた。ただ、「避難所運営などソフト面の対策は実際の経験にも左右される」と話す。

 鹿児島では被災経験のある県外の大都市と災害連携協定を結ぶ県内市町村は多くなく、県も個別に締結しているのは岐阜県や静岡県にとどまる。「神戸市や仙台市など、規模が大きく被災体験のある自治体と広く情報共有や交流を進めるべき。経験を学べる上、有事の際に応援を期待できる」と指摘する。