工業団地「鹿児島臨空団地」分譲が急伸 半導体需要の高まりだけではない理由 熊本で建設進む台湾TSMC、波及効果にも期待

 2023/01/17 10:37
分譲が伸びている鹿児島臨空団地=霧島市(本社チャーター機から撮影)
分譲が伸びている鹿児島臨空団地=霧島市(本社チャーター機から撮影)
 鹿児島県の工業団地、鹿児島臨空団地(霧島市)の分譲が近年急伸している。2022年度もこれまでに半導体関連の製造業と、貨物運送業計3社の立地が決まり、未分譲地は残り2割となった。半導体需要が高まり、物流も増加する中、立地条件や県などの各種補助制度が企業を後押ししているとみられる。世界最大手の進出が決まるなど熊本県で進む半導体工場の一大集積地化も今後、追い風になると捉える向きもある。

 臨空団地は総面積約18.8ヘクタール。鹿児島空港や九州自動車道の溝辺鹿児島空港インターチェンジに近接する「地の利」を売りに、04年度から製造業や流通業を対象に本格分譲を始めた。

 県産業立地課によると、立地企業は現在11社。18年度までの15年間で6社(計4.6ヘクタール)だったが、規模拡充を含めて19年度は2社、20、21年度は各1社、22年度は3社が購入を決め、計10.2ヘクタールを分譲。分譲率は78.7%に達した。このほか5社以上が立地を検討している。

 当初分譲が伸び悩んだのは、他都市より割高な価格(1平方メートル当たり3万6900円)が要因とされた。造成、管理を担当した県土地開発公社が造成費を基に設定していた。

 13年10月、土地の先行取得を必要とする事業が当面ないとして公社は解散。それ以降は県が管理し、残る用地を時価で取得すると、周辺の地価を参考に1平方メートル当たり約2万8000円に下げた。大口の購入事業者には購入費を最大35%相当補助する制度も設けた。

 これまでに県が出した補助金総額は約15億7200万円。一方、用地購入費だけでなく、法人事業税など税収が増え、計289人の雇用も生まれた。県産業立地課の吹留誠吾課長は、ほかにも工場などの設備投資や企業間の新たな取引が見込めるとし、「県内経済への貢献度は高い。霧島市や東京、大阪の県事務所などと連携し、早期の売却を目指す」と話した。

 隣接する熊本県では現在、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が工場を建設中。さらにソニーグループも半導体の新工場建設を検討している。同課によると、臨空団地内に直接取引のある会社はないが、波及効果に期待を寄せる声が出ている。