鹿児島で猛威振るった鳥インフル 最多12例、殺処分134万羽、埋却後の液体漏出…県内制限解除後も〝第2波〟阻止へ「最大限の警戒」

 2023/01/17 08:30
殺処分するため、養鶏場で鶏を捕まえる作業員=2022年11月、出水市高尾野(県畜産課提供)
殺処分するため、養鶏場で鶏を捕まえる作業員=2022年11月、出水市高尾野(県畜産課提供)
 2022年11〜12月に出水、南九州、阿久根の3市で発生した12例の高病原性鳥インフルエンザは、15日午前0時までに全ての移動制限が解かれた。1シーズンの発生件数としては県内過去最多で、殺処分羽数は134万3000羽に上る。全国的には感染が続いており、県内も警戒を緩められない状況は続く。

 「養鶏は県の基幹産業。これ以上の発生を防ぐため、最大限の警戒感を持ってまん延防止に取り組む」。塩田康一知事は16日、県内養鶏場での終息が報告された対策本部会議の冒頭でこう語った。

■■■

 県内での今季1例目が11月18日に出水市で確認された後、わずか1カ月の間に12例に拡大。県内最大規模となる41万羽が殺処分となった3例目では、初めて自衛隊に災害派遣を要請し、防疫措置の完了までに12日を要した。

 採卵鶏は11例で130万6000羽、肉用鶏は1例で3万7000羽が殺処分された。採卵鶏は県内で飼われている1割、出水市では4割に当たる。

 昨年は欧州や北米で夏も流行が続いたため、専門家はシーズン前から「かつてない流行が起きる恐れが高い」と警告していた。養鶏場での発生前から出水平野に飛来するツルの感染・死亡が相次ぎ、「環境中のウイルス濃度が非常に高い状態」(県畜産課)にあり、農場へのウイルスの侵入防止は非常に困難だったとみられる。

 実際、12例中7例は密閉性が高くウイルスの侵入を防ぐとされる窓のない鶏舎で発生した。一方で、ウイルスを媒介する小動物の侵入防止対策や、農場内での作業着の交換が不十分な農場もあり、県は改めて確認と改善を呼び掛けている。

■■■

 続発により、住民生活にも影響が出た。

 出水市野田のため池では殺処分した鶏や卵の埋却地から消石灰が混じった液体が漏出。県は水の抜き取りを進めており、鶏の死骸などを他の場所へ埋め替える方針だ。同市高尾野のため池にも消石灰がたまって一部が江内川に流れ出たことが確認され、水の抜き取りが進められている。

 県内では終息を迎えたが、全国的には1月も発生が続いている。1月16日までに59例発生、殺処分羽数は1102万羽と、ともに過去最多を更新した。

 九州でも10日には宮崎県で発生、16日には大分県で疑い例が確認されるなど、依然として発生リスクは高い。県畜産課の田中和宏課長は「引き続き飼養衛生管理基準を徹底し、養鶏場へのウイルス侵入防止を図ってほしい」と話す。

 今シーズンに次ぐ52例が全国で確認された20年シーズンは、12月に“第1波”、2月には“第2波”があった。渡り鳥のシーズンが終わる5月ごろまで警戒は続く。