店舗兼自宅で買った物件には高校生が住んでいた…成り行きで45年前に始めた下宿、200人以上の相撲部員育てもうすぐ“廃業” 元幕内里山も輩出
2023/01/18 15:00

元幕内里山の番付表(手前中央)など、多くの思い出に囲まれ笑顔を見せる佐田詔八郎さん(右)、和代さん夫婦=鹿児島市西坂元町の佐田下宿
佐田下宿の始まりは「成り行き」だった。1977(昭和52)年9月、スーパーを開業しようと2階建ての店舗兼自宅の物件を購入した佐田さん夫婦が引き渡しに訪れると、家屋には5、6人の高校生が滞在していた。「なんで高校生がいるんだろう」といぶかしんで聞くと、物件は同校の下宿先だった。しかも前の持ち主は夜逃げ同然で連絡がつかない。「とにかく高校生を学校に通わせなければ」。慌てて食材を購入し、食事を作った。
しばらくして和代さんの料理のおいしさが評判になると、相撲部の監督から「専用の下宿にしたい」と申し出があった。詔八郎さんは「乗りかかった船から下りることはできない」と快諾した。
ピーク時の下宿生は23人。アルミ製の大きな弁当箱は台所に収まらず、お風呂場で洗った。早朝3時から3升のガス炊き釜を使用して食事の準備を始めるため、睡眠時間は3時間ほど。78年には夫婦の子どもも生まれた。下宿費だけでは生活費をまかなえず、日中は詔八郎さんは配達や展示販売、和代さんは経理の仕事を続けた。
下宿生の主な出身地は離島で、夫婦を「鹿児島のお父さん、お母さん」と慕う卒業生は多い。奄美市出身の里山浩作さん(41)=元幕内里山、現千賀ノ浦親方=もその一人で、夫婦の誕生日には毎年プレゼントを贈り、折を見て下宿を訪れるなど交流を続けている。
入部当時は173センチ、72.5キロと細身だった里山さんは、卒業までに90キロ近くまで体重を増やした。食が細く、用意されたどんぶり4杯の白米を食べきるのに3時間以上かかっていたという。「苦しそうに食べる姿を優しく見守ってくれた二人の姿を忘れられない」と振り返り、「今でもあの下宿に帰りたい気持ちになる。もっと恩返しがしたいので、おじさん、おばさんには元気でいてほしい」と語った。
2月からは二人だけの時間を過ごす。夫婦は「部屋はたくさん空いている。いつでも泊まりにおいで」と200人を超える“子どもたち”に呼びかけた。
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