コロナ急増で病床不足 「救急搬送困難」1週間で過去最多21件 鹿児島市

 2023/01/21 07:27
出動に備える隊員ら=20日、鹿児島市の中央消防署中央本署
出動に備える隊員ら=20日、鹿児島市の中央消防署中央本署
 救急隊の到着後も搬送先が決まらない「救急搬送困難事案」が、鹿児島市消防局で15日までの1週間に21件あり、週ごとのデータのある2019年4月以降で最多だったことが分かった。前週(4件)の5倍を超え、消防局は「新型コロナウイルス感染者の急増で急患を受け入れる病床が不足している」とみている。

 救急搬送困難事案とは、救急隊が医療機関に受け入れ可能か4回以上照会し、現場到着から搬送開始まで30分以上要したもの。

 市消防局によると、21件はいずれも軽症か中等症で、死亡例はない。現在のコロナ感染「第8波」では昨夏の「第7波」と比べ、患者が専用病床ではなく一般病床に入院する例が増えており、急患を受け入れる病床を圧迫している可能性があるという。

 コロナ下で救急出動数も増えている。2022年は3万6645件(速報値)で過去最多。12月は3667件で、8月(3911件)に次いで多く、今月も高水準が続く。救急課によると、冬場は脳梗塞などの疾患が多く発生する傾向があり、要請がさらに増える恐れがある。

 中村徳明課長は「救急車には限りがある。呼ぶか迷う際は、かかりつけ医に相談したり、市ホームページにある目安『こんな時は、すぐ119番』を参考にしたりしてほしい。ただ、意識がない場合などはためらわず呼んで」と訴える。

 一方、医療機関は救急車を断らざるを得ない状況に悔しさをにじませる。いまきいれ総合病院(鹿児島市)では1月上旬から救急要請を断る割合が4割に達し、目標とする1割未満を大きく上回る。三が日以降、コロナの入院患者が増加。職員の欠勤も相次ぎ、一時は病棟の一部を閉鎖する事態も生まれた。

 現在15床あるコロナ病床はほぼ埋まり、コロナ患者を一般病床で対応せざるを得ない状況も出ている。

 コロナ以外の理由で入院する患者は、コロナ陰性が確認されるまで一般病床の個室に入る。ただ、そこもほぼ満床だ。

 同病院の西山淳救急科部長(61)は「本来なら診れる患者が診られない。他県では医療ひっ迫防止対策強化宣言を発令しているところもある。行政として何らかのメッセージを出してほしい」と訴える。