宿は常に満室、木造アパート8万円…馬毛島の自衛隊基地工事に沸く種子島、ホテル・不動産バブルが起きていた
2023/01/22 11:00

工事関係者の宿泊先確保で争奪戦が起きている西之表市街地一帯=12日(本社チャーター機から撮影)
市街地近くの木造アパート1室が月額7~8万円。西之表市では最近、これが賃貸物件の一つの目安とされる。不動産関係者は「少なくとも2割は上がった。都会並みだ」と苦笑する。
家賃高騰の発端は、同市馬毛島の自衛隊基地整備計画だ。昨年1月に管理用道路整備の一環で島内作業が始まったのを機に、工事関係者の宿舎確保が争奪戦の様相を見せ始めた。
物件不足も深刻で、賃貸情報を見ても空き部屋はほぼゼロ。ある不動産業者によると、新築アパートは建設告知の看板を出した時点で問い合わせが入る。完成前に1棟丸ごと借り上げが決まることもあった。
市には家賃の値上げを通告された住民から、市営住宅の入居相談が複数寄せられた。「異動期でも借り換えは厳しい」「新婚さんの新居が見つからない」といった話は珍しくない。
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宿泊施設も盛況だ。市内の味処井元(いのもと)の旅館は予約が2月まで埋まっている。「毎日20件ほど問い合わせがある。心苦しいけど直前の予約や飛び込みの対応は難しい」と女将(おかみ)の井元まゆみさん(60)。客室の3分の1は、基地工事の関連業者が1年半~3年程度の長期で借り上げているという。
工事関係者の送迎場所の西之表港に近い種子島あらきホテルでは、昨秋から男性専用カプセルホテルが高い稼働率を維持する。荒木政臣専務(39)は「受け入れ人数をどう増やせるか検討している」と話す。
種子島観光協会などによると、宿泊施設の大まかな収容人数は西之表市900人、中種子町230人、南種子町1000人。基地着工前から宿舎確保の波は全島に及び、南種子町でも予約が取りにくくなっている。ある宿泊業者は「工事関係はドタキャンがなく、細かい要望もあまりないのでありがたい」と明かす。
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種子島の宿泊者数は、新型コロナウイルスの影響で4割ほど落ち込んだ。宿泊業にとって、基地工事はこれを補う機会と言えるが、観光客を受け入れる余地がなくなる懸念も広がる。
特にサーフィンやカヤック、スキューバダイビングなど、体験型観光の事業者には死活問題だ。関係者は昨年から、4、5年と見込まれる工事期間中の対応を協議してきたものの、有効策は見いだせていない。
工事に投入される作業員は、ピーク時で5000人規模に上ると言われる。種子島観光協会などはこうした工事関係者をターゲットに、当面は島外誘客から島内向けのPRに切り替え、しのぎたい考えだ。
同協会の酒井通雄会長(59)は「5年後の姿を想像できないのが怖い。それでも準備を急がないと」。人口約2万7000人の種子島が今、大きく変わろうとしている。
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