きっかけはごみトラブル 元の家に運び込み放置する70代男 業を煮やした隣の80代男性に注意され「カチンときた」 一瞬の激高が招いた重い結末
2023/01/23 11:43

かつての隣人を死なせたきっかけはごみの放置だった(写真と記事は関係ありません)
妻の供述調書によると、朝、空き家になっていた隣家に元隣人の70代の男が運転する車が入っていくのが見えた。「今日こそは言ってやる」。なだめる妻をよそに夫は玄関を出た。脳梗塞の後遺症で、まひが残る左半身をかばうため、ゴルフクラブを杖(つえ)代わりにしていた。
数分後、男の大声を聞く。外に出ると夫は路上に倒れ、頭から血を流し、もうろうとしていた。「早く救急車を」。うろたえている男に叫んだ。翌日、夫は後頭部打撲による脳障害で死亡。胸ぐらをつかみ、地面に打ち付け死なせたとして、男は傷害致死の罪に問われた。
ごみを巡るトラブルがきっかけだった。男は2017年に引っ越すと、空き家にごみを持ち込み放置するようになった。野良猫がごみをあさり、道路に弁当容器やペットボトルが散乱。その都度夫が片付けた。知人を介して注意すると一時は改善されたものの、昨年3月ごろからまた持ち込むようになった。あの日の朝、業を煮やした夫が直接注意すると、立腹した男が犯行に及んだ。
男も片足を引きずっていた。杖に体重をあずけながら法廷の証言台に向かう細身の弱々しい姿は、記者には罪名と対照的に映った。
自身の性格を「せっかち」といい、「(注意されて)カチンときた」と動機を話した。「他人のために働く優しい父を殺された。絶対に許しません」。息子の調書には怒りがあふれていた。
夫を亡くした妻もまた、半身まひを患っていた。「二人で一人前」が夫との合言葉。これからも夫婦の思い出をたくさん作るつもりで家もリフォームしたばかりだった。「もう夫に会えない」。厳重な処罰を望んだ。
検察側は論告求刑公判で「被害者に落ち度はなく、体が不自由と知った上での危険な犯行」と男に懲役5年を求刑。裁判長に発言を促されると「誠にすみません」「土下座したい」「早く線香を上げたい」などと、声を震わせながら謝罪の言葉を羅列した。「もういいですか」。裁判長が止めるまで話し続けた。
懲役2年6月の実刑判決が下った。偶発的な犯行であることや遺族に500万円の損害賠償をしていることなどが考慮された。裁判長が刑に不服があれば控訴できると説明すると、「(控訴は)ありません」と言って退廷した。
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