政府、軍用利用に前のめり 情報収集衛星「レーダー7号機」成功 事実上の偵察衛星、開発費512億円 見えない費用対効果

 2023/01/27 11:55
打ち上げ後、リモートで会見する内閣衛星情報センターの納冨中所長(画面右)ら=南種子町の種子島宇宙センター
打ち上げ後、リモートで会見する内閣衛星情報センターの納冨中所長(画面右)ら=南種子町の種子島宇宙センター
 H2Aロケット46号機で26日打ち上げられた政府の情報収集衛星「レーダー7号機」は、周辺国の軍事施設監視など事実上の偵察任務を担う。開発費は512億円。日本の安全保障環境が緊迫する中で利用に期待がかかる一方、費用対効果をはじめ不透明な点は多く、運用を疑問視する声もある。

 政府が情報収集衛星の導入を決めたのは、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイル「テポドン」を発射した1998年8月から4カ月後。2003年から運用が始まった。

 情報収集衛星として3年ぶりに打ち上げられたレーダー7号機は従来に比べ画質の向上などが高性能化。内閣衛星情報センターの納冨中所長は打ち上げ後のウェブ会見で「わが国の情報収集能力の向上、強化に貢献できることをうれしく思う」と成功を喜んだ。

 国は安全保障環境の強化のため、積極的な宇宙利用を進める。情報収集衛星1機あたりの開発費は数百億円。耐用年数は5年程度で今後も定期的な打ち上げが見込まれ、予算は拡大の一途をたどる。

 しかし、偵察衛星としての性格から高度や地表面の撮影精度について、同センターは「回答を差し控えたい」と繰り返す。災害対策利用などを見込み、一部画像は加工して公表するが、性能や運用実態は不透明のままだ。

 防衛省は宇宙領域の専門部隊を強化するため、昨年3月には航空自衛隊「宇宙作戦群」を新設。来月打ち上げ予定のH3ロケットに搭載する衛星を使った赤外線センサーの研究や、民間衛星を利用した情報収集能力の拡充を図る。

 名古屋大学の池内了名誉教授(宇宙物理学)は、軍拡競争が進み、ただでさえ割高な情報収集衛星にかかる費用は拡大するばかりだと指摘。「国は必要性を主張するのであれば、国民生活につながるデータは積極的に開示すべきだ。そもそも宇宙の軍事利用は平和につながらない」とくぎを刺した。