歩道のない狭い道、ひっきりなしに通る車…「危険な通学路」はいつになったらなくなる? 抜本対策の遅れがネックに

 2023/02/01 07:15
石垣側にあった路側帯を道路左脇に移し、正門前に設置した横断歩道を渡る児童=1月26日、鹿児島市喜入町の喜入小学校前
石垣側にあった路側帯を道路左脇に移し、正門前に設置した横断歩道を渡る児童=1月26日、鹿児島市喜入町の喜入小学校前
 全国で通学路の安全対策が進む。2021年6月に児童5人が死傷した千葉県八街(やちまた)市の事故がきっかけだ。春の新入学シーズンを前に、鹿児島県内の現状を探った。

 横断歩道と路側帯が同時に移設され、事故の危険性が大幅に改善された通学路がある。鹿児島市喜入町の喜入小学校だ。

 正門前の市道沿いには、江戸初期の記録が残る高さ約3メートルの石垣が立ち並ぶ。児童は石垣側に引かれた路側帯を通って登下校していた。地震などで石垣が崩れれば、児童が下敷きになりかねない危険箇所だ。

 21年、学校の要望で県警は学校、住民、道路管理者の市と現場を調べた。18年の大阪府北部地震で、通学中の小学生女児がブロック塀の下敷きになり亡くなった事故が念頭にあった。

 21年8月、県警は路側帯を石垣のない反対側に移した。交差点にあった横断歩道はなくし、直線で見通しの良い正門前に新設した。内村英人校長は「横断歩道に気付いて減速、停車する車両がほとんど。児童は石垣沿いを通る危険が減り、安全性が増した」と話す。

 八街市の事故を受け、国は全国一斉の緊急点検を実施。鹿児島県内の危険箇所は1397カ所に上った。自治体(県・市町村)、県教育委員会、県警がそれぞれ対策を進め、22年3月末時点で56%(788カ所)が「完了」した。

 対策は県教委が登下校時の見守り活動といったソフト面、県警は横断歩道の塗り直しなど道路表示の補修が中心。いずれも95%が完了した、としている。だが、歩道の新設など抜本的な改善が必要な自治体の対策は37%にとどまる。大きな予算を伴うのが主因だ。

 鹿児島市中山町の県道小山田谷山線。31日午前7時すぎ、路側帯を歩く児童のすぐ横を通勤途中の乗用車がひっきりなしに行き交った。道幅の狭い抜け道に右折する車も目立ち、後続の車が路側帯側に膨らみながら直進するなど危険な走行が見受けられた。

 近くの中山小は県内最多の1471人が在籍する。10年以上見守り活動をする南地区防犯団体連合会の脇元剛会長は「この10年で児童も車も大幅に増えた。安全確保に向け、地域の協力体制が不可欠」と話す。

 県は交通量が多く、道幅も狭い約300メートルの区間に歩道を新設しようと地権者と交渉を進めている。一部は着工のめどが付いているが、大半はこれからという。

 国は23年度末までに、全国の危険箇所で対策を終えることを目標とする。だが、財源や用地交渉などが課題になり、目標通りの完了は難しいのが現状だ。県道路維持課の椎原賢次課長は「すぐに対応できるものから順次進めている。抜本的な対策も地権者の協力を得て着実に実施していきたい」と話している。



 南日本新聞「こちら373」は、鹿児島テレビ(KTS)と共同で県内の危険な通学路を検証します。「KTSライブニュース」でも2月1日夕に特集を放送予定です。「歩道がない」「道幅が狭い」など危険な通学路の情報をお寄せください。南日本新聞ホームページの「こちら#373」から、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で友達登録してください。