人口減っても、1票の格差が2倍超えても「現状維持」 定数見直さない県議会、身内の議論は限界露呈

 2023/02/06 07:10
議員定数の維持を了承する議会運営委員会=2022年3月16日、鹿児島県議会
議員定数の維持を了承する議会運営委員会=2022年3月16日、鹿児島県議会
 鹿児島県議会(定数51)の議会運営委員会は2022年3月、定数や区割りの現状維持を了承した。人口減が進み、11年以降「1票の格差」が最大2倍を超しているにもかかわらず、23年も同じ枠組みで改選すると決まった瞬間だった。

 意見集約したのは現職議員でつくる検討委員会。20年の国勢調査人口によれば定数19となる鹿児島市・鹿児島郡区は2減、日置市区など2選挙区は各1増の定数2、特例で1増している西之表市・熊毛郡区はそのまま定数2とした。委員8人中5人を占めた最大会派の自民が議論を主導した。

 「鹿児島は南北に長い。他県と同様に定数などを決めたら、満遍なく意見を県政に届けられるだろうか」。委員長を務めた山田国治議員(自民)は、地方への配慮を強調する。

■ □ ■

 検討委で焦点となったのが、全21選挙区のうち11ある1人区の扱いだ。現在は保守地盤を背景に、全て自民が議席を得ている。

 自民以外の会派は、多様な選択肢の提供などを理由に解消を訴えたが、実現しなかった。「解消して影響を受けるのは自民だけ」。自民ベテランの一人は声を潜め、低迷した議論の裏にある損得勘定をにおわす。

 1人区は現職に集中する“権力”が地盤をさらに強固にし、新人が出にくくなる弊害が指摘される。実際、前回19年の改選で無投票の1人区は七つに上った。

 このうち肝属郡区は鶴田志郎議員(自民)が初当選以来6回連続の無投票で、今回も新人擁立の動きは見えない。鶴田氏は「批判もあろうが、全ての住民を支援者と思い地域の面倒を見ている」と話す。

 一方、人口が集中する鹿児島市郡区では、定数を大幅に上回る激戦となる見通しだ。同区の現職は、隣の日置市区の出馬予定者が定数内にとどまっていることを踏まえ「議席をこちらに戻してほしい」とこぼす。

■ □ ■

 検討委の報告書には4月の改選後、自民が現在2議席を独占している西之表市・熊毛郡区への特例に「白紙に戻し十分な協議に努める」との参考意見を付けた。条例上の定数は本来50だが、離島や過疎地への配慮から付則で1増し、この分が割り当てられている。

 「現職のどちらかが引退すれば即1人区になるという冗談が議員の間にある」。別の自民ベテランの言葉に、同僚への遠慮もあり「身を切る改革」に踏み切れない議会の姿が透ける。

 報告書には有識者による検討会を設置し、助言をもらうという提言も盛り込まれた。鹿児島大学の平井一臣教授(政治学)は「第三者委員会に任せるくらいあっていい。議論をオープンにすることで議会も県民の注目を浴びる」と話す。



 統一地方選の前半戦となる県議選(3月31日告示、4月9日投開票)が近づいている。4年間の動きを振り返り、県議会の課題を考える。

(連載「県議会考 2023かごしま統一選」より)