県政の重要課題も非公開で協議…自民県議団の「部会」とは? 4年間、議案修正・否決は1件もなし

 2023/02/06 21:00
鹿児島県の新総合体育館計画への反対陳情6件の大部分を不採択とする県議会最終本会議=2022年10月5日
鹿児島県の新総合体育館計画への反対陳情6件の大部分を不採択とする県議会最終本会議=2022年10月5日
 鹿児島県が進める新総合体育館整備は、2022年の9月県議会で一つのヤマ場を越えた。提出された反対陳情6件の大部分の不採択を最終本会議で決め、議会が容認の立場を鮮明にしたからだ。

 陳情の取り扱いは多数決で決まった。しかし実際は、所管する常任委員会の総合政策建設委も飛び越し、最大会派の自民県議団が設けている「総合政策建設部会」の事前の協議で結論は出ていた。

 関係者によると、部会は7人で構成。うち2人から異論が出たが、県執行部に協調する意見が主流だった。メンバーの一人で、総合政策建設委員長でもある伊藤浩樹議員は「部会でしっかり議論できた。今後もメリハリをつけ、もの申す会派でありたい」と語った。

 部会は常任委や特別委ごとにあるが、非公式な存在のため公開されない。県政の主要課題の方向性が、県民の目に触れないまま決められている実態がある。

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 自民県議団には、全議員49人の8割近い38人が名を連ねている。議長をはじめ重要ポストを押さえ、あらゆる場面で数の力を示す。19年の前回改選時、党派別得票の割合は6割足らずだったが、すぐに無所属議員を取り込み、議席上の勢力拡大に余念がなかった。

 有権者の選択後に「1強」の度合いが増していることについて、宮崎公立大の有馬晋作学長(地方自治論)は「民意が正確に反映されているとは言えない」と指摘する。ただ、「部会の意思は議会の意思」(自民中堅)とも言える構造はより強固になっている。

 議案を提出する県執行部にも自民の安定感は魅力的に映る。「政策の実施に向け、話を通せば確実な大ボスはいない」との不満も聞かれるが、県職員は事あるごとに控室に足を運び最優先で理解を求めている。

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 この4年、県議会では予算や条例の議案修正・否決が一件もない。野党系議員の一人は「自民は執行部との対決を避け、多数に安住している」と批判する。

 ただ、野党側も勢いを欠く。第2会派の県民連合(4人)は昨年の12月県議会で代表質問の割り当てを削られた。所属議員が5月に辞職して勢力が縮小した影響だ。対して昨夏の補選で議席を増やした自民は質問の機会を新たに獲得。差はますます広がる。県民連合の福司山宣介代表は「国政と同じで、自民1強は野党の魅力が薄いからでもある」と悔やむ。

 「議会は二元代表制の一翼だが、首長の与党化が進めば監視機能は甘くなる」と有馬氏は警鐘を鳴らす。その上で、議員に向けて「議決した最終責任は(首長より)議会にあるくらいの気持ちを持ってほしい」と呼びかける。

(連載「県議会考 2023かごしま統一選」より)