政策提言はするけど立案は…県議会も認める「力不足」 都道府県ランキングは一気に10位ダウン

 2023/02/07 21:00
鹿児島県幹部に政策提言の内容を説明する県議会政策立案推進検討委員会のメンバーら(左列)=2022年12月19日、県庁
鹿児島県幹部に政策提言の内容を説明する県議会政策立案推進検討委員会のメンバーら(左列)=2022年12月19日、県庁
 鹿児島県議会は2022年12月、買い物弱者支援と農福連携推進を求める提言書を塩田康一知事に提出した。取りまとめたのは県議会内に設ける政策立案推進検討委員会。酒匂卓郎委員長(自民)は「官民挙げて部局横断的な体制で成果を上げてほしい」と迫った。

 検討委は、議会の政策立案機能の強化を目指し07年度に設置された。これまでの政策提言は30件に上り、活発な取り組みを誇る声は議会内に少なくない。

 一方、政策を自ら提案し形にする議員発議の条例制定となると、手話の普及と理解促進を図る「手話言語条例」(19年度)をはじめ7件にとどまる。

 「法律の専門家がいない議会事務局で、条例づくりの事務を担うのは難しいのが実態。知事部局の力を借りる必要がある」。田之上耕三議長(自民)は提言が中心にならざるを得ない背景を明かし、政策立案の力不足を暗に認める。

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 鹿児島は前年から10位下げて21年は21位-。早稲田大学マニフェスト研究所(東京)が昨年公表した都道府県議会ランキングに関係者は驚きを隠せなかった。

 アンケートに基づき、(住民との)情報共有、住民参画、機能強化の三つの観点から改革度を採点する。地方議会を担当する長内紳悟研究員は、鹿児島が急落した要因を「全国のレベルが上がったため」とみる。

 長内氏によると、新型コロナウイルス禍で活動が制限される中、オンラインでの報告会を始めた議会もある。インターネット上で「子育ての現状を聞かせて」といったアンケートを実施、住民意見を直接募る動きも活発化している。

 鹿児島は、昨年末に提言した買い物弱者支援でも、実態把握や分析を県側に求めてばかりだった。長内氏は「生活課題の拾い上げができていない。議員同士の討議や調査、数字や声を基にした政策提起までの力もまだ弱い」と指摘する。

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 議員個人が地域の実情を踏まえて政策実現を図る場合も、県側を頼るケースは多い。ただ、こうした個別の要望は地域を越えて成果を生むことがある。

 県が昨夏、エアコンが未整備だった県立6高校への設置を表明したことについて、田之上議長は「議会で相次いだ質問や要望が一役買った」とみる。塩田知事も今年1月の会見で、伊佐市を中心に展開されている特別支援学校の設置要望に触れ、「伊佐からの要望は他でも共通の課題として認識が広がった」と述べた。

 地域に精通する立場を生かし、課題を発掘して共有することが、政策立案能力を高める一歩となる。県議会の政策提言は、まだ要望活動に近い。本気で質を高める姿勢が問われている。

(連載「県議会考 2023かごしま統一選」より)