農家手間いらず 産直通販サイト「かごしまぐるり」が好評 スタートアップ運営のサービスに支持広がる

 2023/02/09 15:00
サイトに掲載する写真を撮影し、確認してもらう大薗順士さん(中央)。出品者を定期的に訪ねるのも特徴だ=日置市のままりあ農園
サイトに掲載する写真を撮影し、確認してもらう大薗順士さん(中央)。出品者を定期的に訪ねるのも特徴だ=日置市のままりあ農園
 鹿児島市のスタートアップ企業が運営する県産農産物などの産直通販サイト「かごしまぐるり」が好評だ。“生産者ファースト”をうたい、出品者が生産に極力専念できるようなサービスを提供。ネット上だけでなく実際に顔を合わせた交流を重視し、販路開拓を目指す小規模農家らの支持が広がっている。

 「マスク越しでも香りがすごいですね」。かごしまぐるりを運営するオービジョンの大薗順士社長(39)は、イチゴハウスに入るなり歓声を上げた。

 2月初旬、訪問したのはサイトに出品する日置市の「ままりあ農園」。生産者の鶴田さゆりさん(59)と共に生育状況を確認し、商品紹介ページ用の写真を撮影した。普段からできるだけ出品者の生産現場に足を運び、コミュニケーションを図っている。

 大薗社長の実家は兼業農家。自身も農作業を手伝い魅力を感じる一方、高齢化などで農業が衰退する現状に危機感を抱いていた。県内の通販会社に長年勤めた経験を生かし、サイトを立ち上げたのは2021年9月。生産者が販路開拓を望んでも、現場の作業が忙しく、PRや販売の業務をこなすのが難しい。そこで、サイトは「農家の実入りが増え、生産に専念できるサービスを突き詰めた」という。

 出品者の作業は注文された商品をこん包し、集荷に来た配達業者に渡すだけ。送り状の発行や商品紹介ページの編集、入金確認など事務手続きは全て同社が担う。月額利用料など手数料も不要。商品が売れると、出品者には自身で決めた卸値分が支払われる。

 出品者の多くは大薗社長が直談判で開拓してきた。口コミでも広がり、離島を含め170軒超が出品する。提携するマルヤガーデンズでのチャレンジショップ開催など消費者とリアルでつなぐ取り組みや、加工品開発にも力を入れる。大薗社長は「鹿児島のいいものを全国に発信し、生産者と二人三脚で成長したい」と意気込む。