便利なのに…普及してない防災アプリ、訓練参加者の利用も3割止まり 扱い戸惑う年配者も【川内原発30キロ圏避難訓練】

 2023/02/12 09:20
原子力防災アプリを用い、検査場所で受け付けの手順を確認する参加者=11日、さつま町の柏原グラウンド
原子力防災アプリを用い、検査場所で受け付けの手順を確認する参加者=11日、さつま町の柏原グラウンド
 新型コロナウイルス下で初の住民参加となった11日の原子力防災訓練で、鹿児島県が開発した原子力防災アプリが本格導入された。住民情報を登録しておけば、スマートフォンをかざすだけで避難手続きが簡略化できる。「スムーズに操作でき便利」と歓迎される一方、扱いに戸惑う年配者も多く利用は一部にとどまった。アプリの普及が課題となる。

 「使い方を事前に学んでいたので、手続きがスムーズ。迅速な避難に役立ちそう」。阿久根市の田嶋輝男・折口東区長(68)は期待を込めた。これまでの訓練では避難した住民が、避難所などの受け付け名簿に、氏名や住所を記入していた。2022年4月に運用を始めたアプリがあれば、QRコードを提示するだけで手続きが終わる。

 便利ではあるが、23年1月末のダウンロード数は約3000人。2月9日までに千人ほど伸びたとはいえ、原発から30キロ圏の人口と比べても約2%にとどまる。訓練に参加した住民約500人のうちアプリ利用者は約3割。未登録者らにはQRコードが印刷された紙が配られた。

 いちき串木野市旭地区の避難バス乗り場では個人情報を登録しておらずQRコードが出せない人や、スマホはあるがアプリの取得方法が分からない人など、慣れない操作に戸惑う姿も。旭地区まちづくり協議会の平田隆一会長(74)は「個人情報の漏えいを心配する声や、登録が煩雑との声もあった。一人で操作するのが難しい人もいると思う」と指摘した。