「よそ者視点」でビジネスチャンス発掘 種子島・南種子町へベンチャーなど全国26社訪問 有機農業、ロケット、火縄銃に注目

 2023/02/13 15:18
町幹部(手前)と意見交換するベンチャー企業や若手の経営者=南種子町研修センター
町幹部(手前)と意見交換するベンチャー企業や若手の経営者=南種子町研修センター
 鹿児島県種子島の南に位置する南種子町と全国のベンチャー企業や若手経営者が、将来の連携を見据え、関係構築に乗り出した。第一歩として、26社が1、2日に同町を訪問。「よそ者視点」でビジネスチャンスを探った。町も企業誘致につなげたい考えがあり、各担当が個別協議に臨むなど全面協力態勢で出迎えた。

 町研修センターで1日、各社の経営者と町三役、各課長の顔合わせがあった。参加企業は農業や建設業、旅行、不動産業、コンサルティング業と幅広い。町から各種産業、教育の現状、補助金制度などの説明を受けると、施策の方向性や課題について質問が相次ぎ、予定の1時間半を超えた。

■マッチング

 企画したのは、企業の経営アドバイスや顧問を務める「代表世話人株式会社」(大阪)の杉浦佳浩代表(59)。企業と連携を深めたい自治体との間を取り持ち、これまで佐渡島(新潟)や八丈島(東京)など離島を中心に訪問団を組んできた。鹿児島県は初めて。

 翌2日には、町の担当者と個別協議の場も設けた。杉浦氏は「佐渡島ではIT関連企業のサテライトオフィス開設が実現した。ビジネスチャンスを掘り起こし、官民のマッチングができれば」と話す。

 企業側の関心が高かったのは、町が本年度から力を入れている有機農業だ。3社が消費者の動向や農産物加工品について、担当する総合農政課と意見交換した。同課は「最新情報が手に入った。農家に伝えることで生産意欲の向上につながる」と手応えを口にした。

■提案早くも

 町の観光地を見学する中で、ビジネスチャンスを見いだした企業もある。韓国をターゲットに誘客を手がける「アジアフューチャー」(福岡)の松清一平代表(51)は「種子島宇宙センターや火縄銃と、種子島には研究素材が多い」と強調。町に大学のゼミ合宿の誘致推進を提案したという。

 参加企業の一部は滞在中、町が昨年4月に設置した公営テレワーク拠点「サテライトオフィスみなみたね」も利用した。建設関係の職人を育成する「TSグループ」(鹿児島市)の吉松良平社長(42)は「眺望がいい。スマートフォンアプリでの入退場や仮眠室なども便利だ」と評価。一方で「フリースペースを拡充すればワーケーションの促進につながる」と注文した。

 今回の訪問にかかる費用は各社負担。町は案内の職員を置いたり、移動バスを用意したりするだけで、手出しがほぼなかったのも魅力だった。小園裕康町長は「われわれに足りないところを知る機会になった。南種子の可能性が広がってほしい」と今後の展開に期待を寄せる。