本港区エリアの新体育館計画、新たな段階へ 異論やスタジアム構想もあるけれど…新年度予算案ににじむ鹿児島県の本気度

 2023/02/16 11:00
鹿児島県が新総合体育館の整備を計画しているドルフィンポート跡地(中央)=1月12日、鹿児島市(本社チャーター機から撮影)
鹿児島県が新総合体育館の整備を計画しているドルフィンポート跡地(中央)=1月12日、鹿児島市(本社チャーター機から撮影)
 「体育館は政策的な調整を終え、整備を本格化させる段階に移るのだろう」。2023年度の鹿児島県予算案に合わせて発表された組織機構改正に、県職員の一人が感想を口にした。

 新総合体育館(スポーツ・コンベンションセンター)の担当部署を室から課に格上げし、総合政策部から観光・文化スポーツ部へ移管。職員は5人から7人程度に増やす。いずれも体制を強化する狙いがある。

 新体育館を巡っては、県が22年3月、鹿児島市の鹿児島港本港区エリアのドルフィンポート(DP)跡地に整備する基本構想を策定。同10月には、県議会が計画への反対陳情を不採択とし、容認姿勢を鮮明にした。

 この機を逃せないとばかり、県は予算案でも体育館整備に本腰を入れる。導入を検討する「民間資金活用による社会資本整備(PFI)」関係に3249万円を計上。整備を請け負う事業者に示す要求水準書の作成に入り、事業者選定委員会も設置する。塩田康一知事も今月10日の会見で「具体的な活用法を含めた設計の段階に移る」と言い切った。

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 ただ、本港区エリアは鹿児島湾と桜島を望む県都の一等地であり、体育館以外の活用を求める声は根強い。こうした異論も含めて県民の意見をすくい上げ再開発に反映させようと、県は昨年12月、エリアの利活用検討委員会を立ち上げた。

 委員は市や経済団体の関係者ら15人。これまで会合を2回開き、DP跡地への体育館整備を前提に、中心市街地の活性化と景観を生かした街づくりの両立を目指し意見を交わしている。

 DP跡地では今、新体育館計画の変更を迫る鹿児島市のサッカー等スタジアム構想が持ち上がっている。検討委に委員として参加する市幹部は「中心市街地のみならず県全体への経済波及効果をもたらす」とスタジアムの必要性を説くが、構想は定まっておらず周囲の反応は冷ややか。本格的な議論にはなっていない。

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 一方、体育館について、PFI手法で整備する場合の課題を指摘する声もある。体育館のデザインまで事業者が決められることから、本港区の街づくりの全体像に合わない外観になる可能性がある。検討委の初会合では、委員の一人が「景観資源を暮らしに結び付け、わくわくできる場所であってほしい」と訴えた。

 検討委は23年度末をめどに、エリアに必要な機能とその配置区分を取りまとめる方針だ。県は後押しするため、県民などからの意見募集や委員による県外視察の費用など2124万円を予算案に盛り込んだ。

 一等地の魅力を最大限発揮するには、どのような再開発であるべきか。県は体育館計画との調整を図りながら、さらに議論を深めることが求められる。

(連載「点検 鹿県予算案2023」より)