精神科医のパワハラで自殺 元従業員の家族が損倍請求、裁判所は「自己破産で免責」を理由に棄却

 2023/02/16 08:00
 鹿児島県内の精神科と心療内科の院長だった男性医師からパワハラなどを受け自殺に追い込まれたとして、元従業員の女性=当時(32)=の遺族が医師に慰謝料約2200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、鹿児島地裁であった。坂庭正将裁判長は医師の叱責(しっせき)などを過失と認めたものの、自己破産で免責されるとして請求を棄却した。遺族は控訴する方針。

 破産法は故意か重大な過失で相手を死亡させた場合、損害賠償は免責されないと規定するが、坂庭裁判長は故意、重過失とも認定しなかった。

 判決は女性を叱責したり、関係解消を示唆したりするメッセージをスマートフォンで送ったことを「人格をいたずらに否定するもの」とし、「過失による不法行為」と認定したが、送信内容は「自殺を誘引する危険性が高いものとは認められない」と故意を否定。自殺は容易には予見できなかったとして、重過失にも当たらないとした。

 自殺企図の副作用がある薬の処方で自殺の危険が高まったとする遺族の主張は「抽象的な可能性の指摘にすぎない」と退けた。

 女性は2015年5月から自殺した16年8月まで医師が経営する診療所に勤務した。18年に過重労働で労災認定を受けた。

 医師は20年、診療報酬をだまし取った詐欺罪が確定し、厚生労働省は21年、業務停止3年と保険医登録取り消しの行政処分をした。同年、破産手続きで京都地裁から免責許可を受けた。

 女性の母親は判決後の取材に「亡くなった娘を思うと、こんなに簡単に退けられて残念」と話した。医師の弁護人は「行為の違法性は示されておらず当然の判決だ」と述べた。