活字離れが心配…元新聞記者が書店をオープン 名山堀 築75年の長屋に新刊ずらり「紙の本を残したい」

 2023/02/17 08:03
約千冊の新刊・古書が並ぶ「books selva」を開店した杣谷健太さん=鹿児島市名山町
約千冊の新刊・古書が並ぶ「books selva」を開店した杣谷健太さん=鹿児島市名山町
 昭和の街並みが残る鹿児島市名山町の名山堀に昨年末、元新聞記者の男性が書店をオープンした。築75年という長屋の1階に人文書や写真集など約千冊を並べ、約8割が新刊。「町歩きをしながら、気軽に立ち寄ってほしい」と呼びかける。

 店主は三重県出身の杣谷(そまたに)健太さん(38)。全国紙の鹿児島支局で4年勤務した経験があり、土地にはなじみがあった。記者時代に県外のある書店で、人文書の棚の前を離れられなくなったのが開業のきっかけ。「並べ方次第でこんなに面白さが伝わるのか」と圧倒されたという。

 昨年8月に退社後、知人に相談して最初に見つかったのが名山堀の物件だった。取材や散策する中で気に入っていた場所だったため、即決した。

 店名は「books selva(ブックス セルバ)」。セルバはスペイン語で密林を意味し、随筆・小説、自然科学書、評論から絵本まで幅広いジャンルがそろう。海外文学は南米からチベット、東アジア、東欧などの作品を中心に集めている。鹿児島の郷土史や料理本も取り扱う。

 長屋は元は飲食店だった。木造3階建ての外観はそのままに、照明や床材も極力残し、壁全面に書棚を取り付けた。中央に座れるスペースを設け、店内で書籍をじっくり探すこともできる。「新刊書店を取り巻く環境は厳しいが、本屋がなくなれば活字離れが加速する」と杣谷さん。「背表紙だけでも、多様な価値観や視点があると分かるのが本屋の魅力。紙の本をしっかりと残したい」と話す。

 水曜と第3火曜休み。問い合わせはメールbooks_selva@icloud.com