視力0.1 暗所では「真っ暗」…障害抱え箱根を駆けたランナー、古里の駅伝で真価試す【県下一周駅伝18日号砲】

 2023/02/17 11:00
仕事を終え、自主練習をする鹿児島チームの永井大育さん=鹿児島市浜町
仕事を終え、自主練習をする鹿児島チームの永井大育さん=鹿児島市浜町
 18日に開幕する鹿児島県下一周市郡対抗駅伝競走大会は“古希”を迎える。これまで出場したランナーは延べ約4万1000人。食事の節制や体力の限界など、選手たちは自分自身と闘ってきた。元「箱根ランナー」の永井大育(だいすけ)さん(23)=鹿児島市役所=は、暗い所が見えづらい「網膜色素変性症」と向き合いながら、努力を重ねる。

 西日に照らされ、鹿児島市浜町のランニングコースで練習に励む。「冬は日没が早いので、10分で走れる距離が減ってしまう」。定時に仕事を終え、午後4時30分にシューズを履くのが毎日のルーティンだ。大地の感触を味わうかのように約70分間走り続けた。

 「街灯があっても視界は真っ暗」。症状は幼い頃からあり、小学3年生で病名を知った。母親の久美子さん(45)は「陸上を通じて友達が増えたことで、障害を気にせず普通に生活してくれた」と振り返る。

 辛抱強く、妥協しない性分は長距離走に向いていた。樟南高校を卒業後「箱根駅伝」を目指して創価大へ進学。3年生の時、遊行寺坂を駆け上がる8区を出走し、チーム初の準優勝に貢献した。「4年の時は走れなかったので箱根はたった1回だけ。今までで一番楽しい21キロだった」と話す。

 箱根ランナーの肩書を得て、昨年4月から鹿児島市に戻り、働きながら練習する。高校生以来5年ぶりの出走に胸を躍らせ「箱根は1日に1本だけ。県下一周は5日間で3本も走るので、ランナーの真価が問われる」と気を引き締める。

 視力は、裸眼で0.1、コンタクトレンズを入れても0.3程度。国指定の難病で障害者手帳(2級)を持つため、「家族が心配するので、車の免許は取らないつもり」と笑う。

 今大会は鹿児島チームの主力を担う。「走れることに感謝しながら高校生、大学生を引っ張る。家族や友人に成長した姿を見せたい」と闘志を燃やす。

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