打ち上げ6.3秒前~0.4秒前の間に何が…新型ロケット「H3」飛び立てず 機体下部で異常検知、JAXA「停止は正常」

 2023/02/18 08:20
報道陣の質問に答えるJAXAの岡田匡史プロジェクトマネジャー=17日午後4時13分、南種子町の種子島宇宙センター
報道陣の質問に答えるJAXAの岡田匡史プロジェクトマネジャー=17日午後4時13分、南種子町の種子島宇宙センター
 新型ロケット「H3」1号機は17日、宇宙へ飛び立つことはできなかった。開発に力を注いだ宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関係者は一様に落胆し、早期の原因究明を誓った。

 鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターでは、全国から集まった報道陣や打ち上げ関係者が状況把握に追われた。JAXAの担当者は「見守ってくれた人々に申し訳ない」と肩を落とした。

 予定時刻の17日午前10時37分、メインエンジン(LE9)は煙を出し正常に動いたものの、H3の機体は空へ向かわずに直立したままだった。打ち上げ地点から3キロ以上離れたセンター展望台から見守った報道陣やJAXA関係者らの間には、数十秒の沈黙が流れた。

 補助エンジンが着火しなかった-。間もなく、センター内に状況を知らせるアナウンスが響いた。展望台3階のプレスセンターでは、JAXAの広報担当者が報道陣に囲まれ、説明に当たった。

 異常が見つかったのは、打ち上げ6.3秒前から0.4秒前。この間に何が起こっていたのか。午後2時からのオンライン会見で、この点に質問が集中した。

 JAXAによると、機体下部にある制御用の機器が異常を検知したが、異常がある場所は分かっていない。岡田匡史プロジェクトマネジャーは「いつ何が起きていたのかを含めて、データを追って分析している」と状況を説明した。

 異常が検知されたため、補助エンジンに点火する信号が送られなかった。これについて岡田プロマネは「打ち上げ間際は、いざとなったら、いかに安全に停止させるかに神経を使っている」と解説。今回の停止は正常で、設計意図通りだったとし、「だから良いというわけではない。しっかりと受け止めて次に臨む」。

 機器の機能や点検など、記者の質問に淡々と答えていたが、中止への思いを問われると涙をぬぐう場面も。「打ち上げの瞬間までぬかりないか考えて臨んだが、厳しいと実感した」と声を震わせた。