新型コロナが「5類」になったら予算減らされる? 院内感染経験の病院「インフルエンザのようになるまで補助続けて」

 2023/02/20 08:00
新型コロナウイルス感染者が入院する病棟で言葉を交わすスタッフ=10日、霧島市立医師会医療センター
新型コロナウイルス感染者が入院する病棟で言葉を交わすスタッフ=10日、霧島市立医師会医療センター
 「職員の検査を徹底しても院内感染を食い止めることができなかった」。鹿児島県央の中核病院である霧島市立医師会医療センターの重田浩一朗副院長(59)は振り返る。新型コロナウイルスの昨年夏の第7波で一時、120人の大規模な院内感染が発生した。

 コロナ患者が発生した一般病棟を閉鎖し、新規の入院を停止。2週間にわたり救急の受け入れや手術を止めざるを得ない状況になった。「患者を断らなければならず心苦しかった」と重田副院長。変異を繰り返す新型コロナの感染力の強さを改めて実感したという。一方で、「コロナ禍になって3年。一般医療を制限してしまっている状況が続いていいのだろうか」と葛藤も抱く。

 新型コロナは昨年以降、オミクロン株が主流になった。過去に流行した変異株に比べて重症度の低下が指摘される一方、感染力が増しているとされる。県内でも感染者が大幅に増加。累計感染者の9割超が昨年1月以降で占められている。

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 「引き続き医療提供体制の確保と感染拡大防止に万全を期す」として、県は2023年度の当初予算案で新型コロナ対策に590億円を計上した。新規事業はないが、第7波以降の感染状況を踏まえて現行の対策に十分な予算を充て、前年度当初から110億円増額した。

 医療機関での入院や外来患者のための検査には8700万円から大幅増の14億9800万円、ガウンやマスクなど医療機関の備品購入に2億3800万増の5億6000万円を見込む。

 ただ、国は新型コロナの感染症法上の位置付けを5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる方針を明確にしている。公費支援や医療体制などの対応の詳細は3月上旬をめどに示される予定で、国の方針次第では23年度途中に大幅な減額補正が行われる可能性がある。

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 「5類になってもウイルス自体は変わらない。空床確保や検査費用などの補助金がなくなれば、より一層感染対策は難しくなる」。年末から続いた第8波で100人以上の院内感染を経験した大隅鹿屋病院(鹿屋市)の中山義博院長(59)は国の動向に気をもむ。

 現在、病院では外部からのウイルスの持ち込みを防ぐため新規入院患者に最低5日間の検査を実施しているが、補助金がなくなれば患者負担となり、検査を拒否する人が出て院内感染が起こるリスクが高まる。中山院長は「コロナがインフルエンザのようにある程度流行が予測できるような感染症になるまでは、引き続き検査や感染防護具の補助をしてほしい」と要望した。

 23年度当初予算には、医療体制の整備について指導・助言する感染症専門医の養成をはじめ、次の感染症危機に備える対応として3億2000万円も盛り込まれた。新型コロナの「第9波」や新興感染症の発生も危惧される中、県民の命と暮らしを守るための体制構築が求められる。

(連載「点検 鹿県予算案2023」より)