「人生という名の線路へ旅立って」 松本零士さんが見せた、ロケットの街・鹿児島への深い思い

 2023/02/20 21:26
鹿児島を舞台にした「銀河鉄道999 ダイヤモンドリングの彼方へ」の観客と記念撮影する原作者の松本零士さん(前列左)、足立梨花さん=2009年、鹿児島市の鹿児島ミッテ10
鹿児島を舞台にした「銀河鉄道999 ダイヤモンドリングの彼方へ」の観客と記念撮影する原作者の松本零士さん(前列左)、足立梨花さん=2009年、鹿児島市の鹿児島ミッテ10
 宇宙を舞台に壮大な作品を生み出した松本零士さんは、二つのロケット発射場がある鹿児島への思いが深かった。代表作「銀河鉄道999」にちなみ、鉄道に着目した観光振興にも尽力。訃報が伝わった20日、ゆかりの人々は宇宙への夢を身近にした漫画家を惜しんだ。

 松本さんは1995年、日本宇宙少年団の「おおすみ分団」結団式のため鹿屋市を訪れた。子どもたちがサインをねだると、約40人の色紙に「銀河鉄道999」のメーテルを描いてくれたという。

 世話役を務めた鹿屋市西原2丁目の枦山博信さん(69)は「『おおすみ』と聞いただけで、日本初の衛星から命名したことを理解してくれた。宇宙への夢を生き生きと語る姿が印象的だった」と懐かしんだ。

 2009年には、県の観光PR映画として「銀河鉄道999」のオリジナルアニメを制作。同年に皆既日食の好観測地となった鹿児島を舞台にした999秒(16分39秒)の作品には、桜島や砂蒸し温泉も登場した。鹿児島市での公開に松本さんも駆けつけ、「少年が志を果たす物語。それぞれの道を目指し人生という名の線路へ旅立って」と若者にエールを送った。

 県職員で松本さんとやりとりした廻秀仁PR観光課長は「少年の心を持っている方で、子どもに夢や希望を与えたいという思いにあふれていた」と振り返った。

 肥薩おれんじ鉄道は10年7月から5年あまり、「999」のラッピング車両を運行。県内外からファンを呼んだ。

 肝付町役場の町長応接室には、メーテルが描かれた作品が展示されている。宇宙関連施設のある全国の6自治体でつくる「銀河連邦」に12年、松本さんから贈られた。