元駅伝選手の父が50代でがんに…警察官になった息子は白バイ隊で「最後の親孝行」を果たした

 2023/02/22 15:00
熊毛チームを先導する県警交通機動隊の稲子海晴巡査長=21日、曽於市
熊毛チームを先導する県警交通機動隊の稲子海晴巡査長=21日、曽於市
 鹿児島県下一周駅伝をきっかけに白バイ隊で活躍する警察官がいる。県警交通機動隊の稲子海晴巡査長(28)。かつて熊毛チームで走り、大の駅伝ファンだった亡父和美さんの思いを背に熊毛チームを先導している。

 「父と一緒に必死に旗を振って応援した」という県下一周駅伝。選手たちを安全へと導く白バイ隊員の姿が少年の心を動かした。「いつか自分も」と警察官を志し、2019年から念願の交通機動隊に勤務する。

 配属を誰よりも喜んだのが和美さんだった。だが、その時すでにがんが進行していた。20年2月の大会で鹿児島チームの先導を務める姿を見せたのが最後の親孝行になった。半年後、52歳の若さで亡くなった。

 「白バイで先導する自分の姿や選手の走りを夢中で応援する動画は大切な形見になった。父が大好きだった県下一周駅伝に安全面で貢献したい」。21年から3年続けて父の地元・熊毛のランナーを導いている。

 21日は曽於市からゴールの鹿屋市役所までを担当。「コロナの影響も和らぎ、たくさんの沿道応援に元気づけられた」。応援者の飛び出しやランナー同士の駆け引き、路面や交通状況に気を配り、重さ300キロほどの白バイを乗りこなす仕事は「一瞬も気を抜けず大変だが、地域を守る原点を感じさせてもらえる任務で誇りに思う」。最終日まで仲間とともに安全を守り抜く。

 あわせて読みたい記事