再エネ普及の「切り札」 洋上風力発電の事業化は県にかかっている? 薩摩半島西方沖、利害関係者の調整難航
2023/02/24 08:50

洋上風力発電について説明する資源エネルギー庁職員=2日、薩摩川内市役所
薩摩半島西方沖の三つの洋上風力発電計画を巡り、鹿児島県が2日、薩摩川内市役所で開いた利害関係者向けの説明会。漁業者や砂利採取事業者ら約30人を前に、資源エネルギー庁の担当者が呼びかけた。
国は2050年の脱炭素実現に向け、3000万~4500万キロワット(原発約45基に相当)の洋上風力を40年に導入する目標を掲げる。事業化には利害関係者の意向や調整状況、候補海域の気象条件を都道府県が国へ「情報提供」する必要があり、地元の利害関係者の合意が前提となる。県が自治体などに聞き取りした結果、「理解が進んでいない」として2022年度は見送った。
これまで県は、自治体担当者向けの勉強会を開催してきたが、幅広く共通認識を持つために、初めて利害関係者を対象に開催。いちき串木野市や長島町などを含む地元5市1町と、県水産会館(鹿児島市)で、計約200人が参加した。
薩摩半島西方沖は風速が安定し、収益性が高いとされる。事業化を実現したい企業側は、数年前から地元の利害関係者向けの説明会を各地で開く。一方、地元では漁業者同士でも賛否が割れている状況。説明会に出席した漁師の男性は、「洋上風力は環境や幅広い業種に影響を与える。制度説明だけでなく、必要性を議論する場を早期につくってほしい」と注文した。
県は23年度の当初予算案で、化石燃料からクリーンエネルギー中心の社会・経済構造に転換させるグリーントランスフォーメーション(GX)の推進を打ち出した。民間事業者を対象に、バイオマスや小水力発電の設備導入に向けた調査・設計費を支援。省エネ設備の導入費用も補助する。関連事業に3億3557万円を盛り込んだ。
ただ、再エネ普及の「切り札」とされる洋上風力の議論については、スピード感を欠く。昨年の県議会12月定例会で、導入検討に向けて地元自治体と県が意見交換する研究会を設置すると表明したものの、開催時期は未定で、予算案にも反映されなかった。
全国に先駆けて洋上風力の事業化が進む秋田県では、県が取りまとめ役となって学識者や漁業者で研究会を設置し、数年かけて利害関係者との調整を重ねた。国際大学(新潟県)の橘川武郎副学長(エネルギー産業論)は県が取り組む設備導入支援の必要性を認めつつも、「地元で持ち上がる洋上風力の計画にも、県として向き合うべきだ」と指摘した。
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