潮の引いた和歌山の海岸。何げなく蹴った白亜紀の泥岩の塊。中から出てきたのは縦筋が特徴の歯の化石。なんとスピノサウルスのものだった
2023/02/27 11:26

割れた泥岩の中に、スピノサウルス類の歯の模様がくっきり現れていた=2018年10月、和歌山県湯浅町
鹿児島以外で、私が発見した恐竜化石の話です。恐竜ファンによる人気投票をすると、暴君竜ティラノサウルスと並び、背中に背びれのような帆がある巨体のスピノサウルスが必ず上位にランクインします。
映画「ジュラシック・パーク3」では、この2大恐竜が戦い、なんとスピノサウルスがティラノサウルスをなぎ倒すというシーンがあります。迫力ある場面を記憶している人も多いと思います。
実は、スピノサウルスの仲間が日本にも生息していたのです。2018年10月、和歌山県湯浅町を訪れました。化石の発掘ではなく、道の駅でミカンを買い求めるのが目的でした。時間があったので海岸に向かうと、潮の引いた海底に白亜紀の泥岩(でいがん)の塊(かたまり)がたくさんあるのが見えました。
何となく気になり、一つを蹴ってみました。するとパカンと割れた岩の中から、縦方向に筋がある特徴的な歯の化石が出たのです。
この縦筋には見覚えがありました。「日本の恐竜図鑑」(15年出版)を執筆する際に取材した、群馬県で発見されたスピノサウルス類の歯にそっくりだったのです。魚を食べる恐竜に見られる特徴で国内3例目の発見。西日本では初めてでした。歯の根元を含めた長さは4センチありました。
発見に刺激されたのか、各地の発掘現場が勢いづきました。20年7月に福井県勝山市、今年1月には和歌山県広川町で、スピノサウルスの歯化石発見が相次いで発表されたのです。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)
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