産後ケアのサービス内容が伝わっていない…? 市の応援金券2倍になっても利用率36%止まり 薩摩川内

 2023/02/24 21:30
出産後間もない母親に産後ケアをする助産師=薩摩川内市の子育て支援センター「おいでおいで」
出産後間もない母親に産後ケアをする助産師=薩摩川内市の子育て支援センター「おいでおいで」
 鹿児島県薩摩川内市は、出産後に助産師など専門職が母子をサポートする産後ケア事業を拡充している。この2年で支援金を増額し、保育施設を活用した通所型事業も後押ししてきた。事業を評価する一方で「もう少し周知が必要」「請け負う側が収益を上げるのは難しい」という関係者の声も聞かれる。

 市は、産後1年未満の母親を主な対象に「産後ケア応援券」を発行している。申請すれば20枚つづりの1万円分の券が受け取れ、市内外の指定助産院・病院18事業所で乳房ケアや骨盤ケア、ベビーマッサージなどのサービスを受けられる。

 2020年10月に初当選した田中良二市長は、少子化対策の一環で出馬表明時から産後ケアの充実を掲げていた。就任直後、市民の声を聞く「令和デザイントーク」に地域の助産師を招いて現状を聞き取り。応援券の金額を従来の倍に増やし、市が保育園や小児科医院に委託している地域子育て支援センターで産後ケアも受けられるようにした。

 市内外の開業助産師5人はグループを組み、同センターでの産後ケア事業を請け負う。母親をケアしている間、保育士らが乳児の世話をするので、母親はしばし安心して子育てから離れられる利点もある。1回50分4000円で、2回は応援券を使い無料にできる。メンバーの藤崎るみ子さん(56)は「産後3、4カ月と9カ月ごろは母親の自殺率が高くなると言われており、ケアが重要」と意義を語る。

 全出生数に対する21年度の応援券交付割合は、前年度比で15%上昇。延べの利用人数も倍増した。しかし、実際に利用したのは交付した枚数の36%にとどまっており、ケアの中身の周知が課題として残る。

 藤崎さんは「薩摩川内市は県内の他自治体に比べて支援が手厚い」と評価しながらも「産後ケア事業は収益を見込みづらい。行政の支えは不可欠」と継続的なサポートも訴える。グループは全員、他の医療機関で働きながら活動している。

 田中市長は「一定の成果はあった。これからも利用者や助産師の声を聞きながら、工夫拡充できるものがあれば議論する」と課題解決に取り組む意向を示した。