GIGAスクール、鹿児島では構想倒れ? デジタル端末、高2以上は原則自己負担 保護者「家計に響く」

 2023/02/26 11:00
 2022年度から実施された新学習指導要領に基づき、高校で新たな必修科目「情報Ⅰ」が加わった。国は情報活用能力の育成を重視しており、「GIGAスクール構想」で小中学生へデジタル端末1人1台を配備したのに加え、高校でも1人1台の配備を推奨する。

 鹿児島県の県立高1年生は全員、県費で配備した学校の端末を授業で使う。ただ、23年度から2年生となる子を持つ鹿児島市の40代母親は、新年度以降の端末を自前で用意するよう学校から求められ困惑した。引き続き学校端末が使えると思っていたからだ。

 手持ちの機種は県教委が示した要件に合わず、新たに約9万円の出費を余儀なくされた。「子どものためとはいえ家計に響く。負担を求めるなら、事前に意見を聞いて決めてほしかった」と納得できない様子だ。

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 県教育委員会によると、県立高校で配備されている生徒用端末は、公費で21年度までに用意したタブレット型が1万2776台。22年度生徒総数の約54%に当たる。パソコン室の据え置き型4967台(22年2月現在)を合わせると約75%をカバーする。

 ただ、県教委はこれ以上の公費配備に及び腰だ。これまでの県議会で「高校生が自分に合った端末を自分で選択し、利用することが望ましい」などと答弁。23年度当初予算案では、プログラミングに関する教員研修や授業をサポートするICT支援員を派遣する事業に4633万円、情報化推進へ市町村教委や学校を支援する事業として1915万円を計上したが、新規の端末配備経費は2年連続計上しなかった。南日本新聞社の取材に対し、財政上の負担を懸念したわけではない、としている。

 不足する端末は保護者の負担となる。機種や仕様にもよるが、現1年生の保護者が端末購入にかかった出費は3万円台~10万円台とみられる。経済的理由などで購入が難しい場合は学校から貸し出されるが、対象は限定的だ。

 1年生の子を持つ薩摩川内市の50代父親は「なぜ公費で全生徒分をそろえられないのか。将来的にそろえる考えがあるのか。県教委はきちんと説明するべきだ」と語気を強める。

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 九州7県のうち鹿児島と宮崎を除く5県は、22年度までに公費で県立高校の全生徒にタブレット端末を配備した。このうち福岡県は、20年度からの3カ年でそろえた約6万5000台のうち約4万台を22年度に調達した。22年の年頭会見で服部誠太郎知事が県立高校の端末配備を「積極的に進めたい」と意思表示し実現させた。宮崎県は22年度から原則保護者へ購入を要請。貸与用のみ公費負担とした。

 鹿児島を中心に活動し、教育の情報化を支援するICT活用教育アドバイザーの星野尉治(じょうじ)さん(東京)は「負担について疑問を持つ保護者がいるということは、説明の不十分な学校があるのかもしれない。保護者へより丁寧な説明が求められる」と指摘する。

(連載「点検 鹿県予算案2023」より)