希少フルーツ「アボカド」を稼げる農業にするには? 安定生産確立へ、行政の長期的視点の支援が不可欠
2023/02/27 09:00

農場でアボカドの木の生育を確認する有川四男さん=15日、南大隅町根占
同町では温暖な気候を生かし、10年ほど前からアボカドの産地化に取り組む。耕作放棄地の解消のほか、サルなどの鳥獣害の軽減にも効果があるとして始まった。2016年には生産者が情報交換をする研究会を発足。22年までに380アールで38人が生産を始めた。
技術指導に加え、苗木や防風資材の購入助成、販路拡大の支援などでJAとも連携する。移住者の呼び込みにも一役買っているという。全国的に健康志向などを背景に特に女性のニーズが高まっており、安心安全を売りに国産の需要は高まっている。
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県は23年度当初予算案に初めて、アボカドやドラゴンフルーツといった希少フルーツの産地育成に向けて800万円を計上した。安定的な生産のための課題を整理し、技術の確立や生産者の確保、商品作りの経費の一部を支援する。
希少フルーツは産地の少なさ故に生産面で課題が多い。一方で「アボカドと言えば南大隅」といった形で“わが町の商品”として、地域の知名度やブランド力を向上させるポテンシャルも秘めている。
県農産園芸課の黒鳥和也課長は「消費者のニーズが多様化し需要は見込めるが、まだ安定生産はできていない。先駆的な取り組みを応援していきたい」と狙いを語る。
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塩田康一知事は就任以来、県の基幹産業である農林水産業の「稼ぐ力」の向上を掲げてきた。今回の予算案でも攻めの農林水産業の実現に向け、すでに一定の実績がある輸出を重視。25年度までに県産農林水産物の輸出額を500億円にする目標達成のため、大規模産地の構築などに2億円超を充てた。
一方、「稼ぐ力」へ今後成長することが期待できる分野にも、新たに予算措置したのが特徴だ。希少フルーツの産地育成のほか、県内の水産物を新幹線で消費地に輸送する高付加価値化など、国内向けの販路開拓や比較的小規模な産地育成の取り組みが並んだ。
アボカドは年によって収穫量の増減も激しく「正直、まだ収入源にはなっていない。実証段階という気持ちで取り組んでいる」と有川さん。一方で同町の営農指導員、岩下恭一さん(59)は「そろそろ町として結果を出していかなければいけない時期にきている」と話す。
現状では「稼げない」事業への挑戦に対する県の支援。腰を据えた長期的な視点を持ち、「稼げる」ように育てていく覚悟が問われる。
(連載「点検 鹿県予算案2023」より)
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