残り300メートルで勝負のスパート…1週間後の結婚式へ「特別な思い」が大会新4連覇を導いた【鹿児島マラソン】

 2023/03/06 15:00
大会新で4連覇を果たした飛松佑輔(日置市役所)。右は3位の吉村大輝(宮崎陸協)=鹿児島市
大会新で4連覇を果たした飛松佑輔(日置市役所)。右は3位の吉村大輝(宮崎陸協)=鹿児島市
 鹿児島マラソン2023は5日、鹿児島市を発着する特設コースであった。フルマラソン男子は飛松佑輔(日置市役所)が2時間14分40秒の大会新記録で制し、4連覇を飾った。2位は古川大晃(東大大学院)、3位は吉村大輝(宮崎陸協、鹿児島実高出身)だった。

 レースは序盤から飛松、古川、吉村の3人が引っ張る展開。10キロ付近で飛松が抜け出して独走を続け、2位と3分17秒差をつけてゴールした。

 フルマラソン女子は坂川恋露(鹿児島銀行)が2時間38分57秒で初優勝。2位は米倉まり(東京・大濠ランナーズ)、3位は吉村碧葉(鹿児島・スサラ)が入った。

■飛松4連覇

 4連覇して、1週間後の結婚式に花を添える-。大会3連覇中の飛松(日置市役所)は特別な思いを込めて鹿児島市を出発した。仙巌園前の12キロ付近から一人旅を続け、自身の大会記録を11秒更新してテープを切った。

 ゴールまで残り300メートル。鹿児島市電の水族館口電停に差しかかり、左腕の時計に目を落とした。「(大会新は)60秒以内に走ればいける」。胸を張り渾身(こんしん)のスパートをかけ、見事に目標を達成した。

 鹿児島マラソンでは“絶対王者”だが順風満帆ではなかった。2021年12月は5、19日と立て続けにフルマラソンを走り、左脚の股関節を故障。自己ベストを更新した代償は大きかった。けがと向き合いながら、試行錯誤して練習を続ける日が続いたという。

 昨年の県下一周駅伝は不本意な成績に終わり、日置チームに迷惑をかけた。その間、妻しほ乃さん(31)は時に厳しく、時に優しく支えてきた。今年2月はエースとしてチームの優勝に貢献。最高の形でマラソンに挑み、存分に力を発揮した。「結婚式でいい報告をしようと、あえて自分にプレッシャーをかけた。達成できてうれしい」

 ゴール地点では、しほ乃さんと長女なな椛ちゃん(1)が出迎え、笑顔で喜びを分かち合った。家族思いの31歳は「娘の記憶に深く刻まれるまで一年でも長く走りたい」と穏やかに話した。