歓喜から14分後…「まさか」「なぜ」 H3打ち上げ失敗 見物客の笑顔、一転涙に

 2023/03/07 22:20
H3ロケット1号機の航跡を追う見学者=7日午前10時40分、南種子町の長谷公園
H3ロケット1号機の航跡を追う見学者=7日午前10時40分、南種子町の長谷公園
 青空にくっきりと白煙の航跡を残し、上昇を続けたH3ロケット1号機。歓喜に沸いたのはわずか14分だった。「指令破壊」を伝える場内アナウンスが響き、鹿児島県南種子町の長谷公園に集まった見学客から笑顔が消えた。「まさか」「なぜ」。空を見上げながらつぶやく声が、あちこちから聞こえた。

 打ち上げ寸前の中止から約3週間。新型ロケットの再挑戦を見守ろうと、再び同町を訪れた県外客も多かった。西之表市馬毛島の自衛隊基地整備の影響で宿泊先の確保が難しく、山口県柳井市の公務員中島優さん(41)は、家族4人でキャンプをしながらしのいだという。「言葉にならない。残念だ」と涙を浮かべた。

 種子島宇宙センターでは5日まで「種子島ロケットコンテスト」があり、宇宙開発に関心が高い大学、高専の学生らも延泊して打ち上げを見守った。早稲田大学3年の宇都宮大地さん(21)は「H2Aなどで実績があった2段目エンジンにトラブルとは…。日本の宇宙開発を担うロケットだけに、開発者の悔しさはどれほどだろうか」。

 H3ロケットは、1号機の打ち上げが成功すれば、将来的に年6機体制を目指す方針だった。「宇宙へ一番近い町」を掲げる南種子町にとって、街のにぎわいにも直結する。「軌道に乗るにはまだ時間がかかるだろう。しっかりとした原因究明と対策を待つしかない」と町商工会の山中強会長(60)。小園裕康町長は「海外でも失敗を重ねて技術を確立させている。ロケットがあっての町。今後もできるだけの支援をしていきたい」と、関係者へエールを送った。