(詳報)H3失敗、JAXA陳謝「原因究明に尽力」 イプシロン6号に続く失敗、国産機の信頼失墜避けられず

 2023/03/08 07:15
地球観測衛星だいち3号を載せ、打ち上げられるH3ロケット1号機=7日午前10時38分、南種子町の種子島宇宙センター
地球観測衛星だいち3号を載せ、打ち上げられるH3ロケット1号機=7日午前10時38分、南種子町の種子島宇宙センター
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7日午前10時37分、新型基幹ロケット「H3」1号機を鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げたが、2段目エンジンに着火せず約14分後、地上から破壊する指令を出した。2022年10月に肝付町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げたイプシロン6号機に続く打ち上げ失敗となり、国産機の信頼失墜は避けられない。

 JAXAによると、2段目エンジン「LE5B-3」はH2Aなどで培ってきた技術を踏襲して新開発。飛行は1段目と2段目の切り離しまでは順調だった。発射から5分16秒後に予定していたLE5B-3の着火が確認されなかった。飛行を続ければ制御できず危険性があり、同14分後に地上から指令破壊信号を出した。機体はフィリピンの東方海域に落下したとみられる。被害の情報などはない。

 JAXAは山川宏理事長を長とする対策本部を設置した。山川理事長は記者会見で「H3は政府のみならず、民間が宇宙にアクセスする上で重要なロケット。まずは原因究明に尽力し、信頼性の回復に努める」と陳謝した。機体やエンジン部分を含めて現在究明中。飛行データなどをもとに解析を進める。

 H3は当初20年度の打ち上げを目指していたが、メインエンジン「LE9」の不具合が相次ぎ、2度見直し。イプシロンの失敗を受け、機体の姿勢制御装置の部品も一部変更した。23年2月の打ち上げが決まった後も、システム不具合などで延期が相次ぎ、同17日は発射直前に電源系統で異常が検知され自動停止した。

 H3は現在運用中のH2Aロケットの後継機。H2Aと比べて推力を1.4倍にして衛星打ち上げ能力を向上させ、静止軌道に6.5トン以上の衛星を投入できる。低価格化を進め、打ち上げ費用は半額となる約50億円を目指す。

 1号機はLE9を2基、固体ロケットブースターを2基使い、被災地把握などに役立てる地球観測衛星「だいち3号」を搭載していた。

 H3は今後、国際宇宙ステーションや米国主導の月周回基地ゲートウエーに物資を届ける新型補給機「HTV-X」を搭載予定で国際貢献の役割も担う。

【H3ロケット】宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発した使い捨ての液体燃料ロケット。1号機は全長57メートルで直径5.2メートル。1段目のエンジンや補助の固体ロケットブースターの数を変えて、さまざまな重さや大きさの衛星を打ち上げられる。市販品を利用し、3Dプリンターで部品を製造することで費用を抑えることを狙っている。