茶くみ、掃除は「女性の担当」…男女不平等な「慣例」いまだ職場に根深く【国際女性デー】

 2023/03/09 11:00
職場で昼前にお茶を準備する小川和茂さん=1月30日、鹿児島市の渡辺組
職場で昼前にお茶を準備する小川和茂さん=1月30日、鹿児島市の渡辺組
 鹿児島市の女性(50)は地場企業で正社員として働いて数十年になる。職場に女性は1人。事務職として支払いやクレーム対応、出納管理などを担当する。

 正午からの昼休み。男性社員たちは30分前から昼食を買いに出掛け、ちょうどに食べ始める。それに合わせて女性がお茶を準備する。男性からは「冷たい麦茶を」「コーヒー粉を買ってきて」と求められる。

 昼食が終わった男性社員は、そのままタバコを吸いに外に出るなど1時間の休憩時間いっぱいくつろぐ。男性が使った湯飲みを洗うのも女性の「仕事」だ。来客や電話応対で昼食時間を取れない日もある。

 「何かに明文化されているわけではないが、前任者からの慣行が続いている。性別役割分担がある」。女性は疑問を感じるが、諦めている。

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 鹿児島県内の民間で働く約2000人から回答を得た南日本新聞のアンケートでは、多くの人が性別による役割固定化に不平等感を募らせていた。

 出水市の40代男性は「女性は出社後の清掃や洗濯などが慣例」。鹿児島市の30代女性は「男性も使うはずのトイレや食堂の掃除を女性だけでしている。勤務時間に含まれない」と答えた。電話や窓口での対応も、主に女性が担うとの意見が目立った。

 アンケートでは、仕事と私生活を両立させる上での不平等感も尋ねた。「ある」と答えたのは、男性の3割に対し女性は6割と差が開いた。背景には家事育児の負担の偏りがある。

 鹿児島市の40代男性は「共働きで子供が体調不良になった場合、だいたい妻が仕事を休む」と指摘。指宿市の40代女性は「夕飯の準備や子供のことを常に考えないといけないのは母親。男性も平等に子育てや家事をすれば、職場の意識も変わる」と記載した。

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 鹿児島市の建設業渡辺組では昼食時、男女を問わずお茶くみを引き受けている。女性だけの当番制だったが、昨冬ごろから男性も加わった。経営管理室長代理の小川和茂さん(43)は慣れた手付きで急須に茶葉と湯を入れ、「1分から1分半くらい置くのが大切」と丁寧に注いだ。

 同社は来客時のお茶も原則ペットボトルに切り替えた。働き方改革を進める上で、湯沸かしや洗い物などの手間を省き、効率化を図っている。

 いずれも呼び掛けたのは渡辺丈社長(50)。「誰も疑問に感じない長い習慣だった。簡単にできることからやろうと取り組んだ」と振り返り、「男性も女性もみんな頑張ってもらわないと」と期待を込めた。



 8日は国際女性デー。南日本新聞が県内で働く人を対象に聞いたアンケートでは、男女ともに仕事場での性別による不平等感を抱いていた。働く現場の社会的性差(ジェンダー)平等の今を追った。