今春、コロナ禍をくぐり抜けた生徒とともに〝卒業〟 教員生活37年、校長先生が手書きの卒業証書に込めた思い

 2023/03/09 15:03
卒業証書に一枚一枚心を込める東正昭校長=伊佐市の大口中央中学校
卒業証書に一枚一枚心を込める東正昭校長=伊佐市の大口中央中学校
 鹿児島県伊佐市の大口中央中学校を最後に今春で定年退職する東正昭校長(60)は、14日の卒業式で渡す卒業証書123枚の氏名などを全て手書きした。入学と赴任が重なり、3年間をともに過ごした教え子たちへの思いを、教員生活37年の集大成として筆に託した。

 東校長は1986(昭和61)年に県の教員に採用。2校目に同中の前身、大口中に赴任し、89年から7年間を過ごした。「その時に出会ったのが妻で、伊佐は第二の古里」という。当時の教え子が今の生徒の保護者というケースも少なくない。

 専門は数学。習字は小学生の時に2年間習っただけで、その後は独学で筆を握り続けた。流麗な筆文字は周りから一目置かれるようになり、表彰状の名前書きを頼まれることも増えた。

 卒業証書は通常、地元の書家やシルバー人材センターに依頼するケースが多いが「コロナ禍で苦しい生活を強いられた生徒をねぎらいたい」と、自ら筆を握った。昨年末から書き始めたが、思うような字が書けない日もあり、1カ月ほどかかって仕上げた。

 「生徒一人一人の顔や会話を思い出しながら心を込めて書いたので、少し時間がかかった」と苦笑いする東校長。「古里を誇りに思い、地域の人に愛される人間に育ってほしい」と願った。