校長と対立し信念を曲げず高専を中退…それでも母校に寄付を続けた社長 55年後、名誉卒業証書が贈られる

 2023/03/09 21:08
名誉卒業証書を受け取る高橋忠仁さん=霧島市隼人の鹿児島高専
名誉卒業証書を受け取る高橋忠仁さん=霧島市隼人の鹿児島高専
 霧島市の鹿児島高専は、同校を不本意ながら中退した資産管理会社エンデバー社長の高橋忠仁さん(74)=横浜市、屋久島町出身=に、第1号となる名誉卒業証書を贈った。多額の寄付を通して、教育研究活動に貢献したことが認められた。高橋さんは「学びやでの日々があったからこそ今がある。社会に還元していきたい」と話している。

 高橋さんは1965年に3期生として入学。水俣病が社会問題となる中、最終学年の5年生3学期に学校新聞で「哲学のないエンジニアが公害を引き起こした。なぜ学ぶのかを問い続けねばならない」と書いた。

 それを見た校長が激怒。持論を撤回するか、学校を辞めるかを選ぶよう言い渡され、中退した。「ピュアな志を抱くことの大切さを学んだ」と振り返る。

 中退後に上京し、法律事務所などで働いた後、82年に横浜市で半導体関連製品販売の「PALTEK」を設立。2012年からはベンチャー企業育成を支援するNPO法人「MINERVA」の理事長に就くなどしてきた。

 21年に鹿児島高専と国立高等専門学校機構にそれぞれ5000万円、同窓会に1000万円を寄付。学内の環境整備や学生の国際交流促進などに役立てられている。

 6日の名誉卒業式で、氷室昭三校長が証書を授与した。高橋さんは「まさか卒業証書をもらえるとは思わなかった。人生百年時代なので、あと25年は社会のために頑張りたい」と喜んだ。

 同日、高専制度の60周年を記念する植樹式もあった。

 あわせて読みたい記事