高架橋の防音壁に欠陥、遊歩道に剥がれ落ちる JR指宿枕崎線谷山-慈眼寺 福岡、佐賀、大分でも使用

 2023/03/10 07:05
剥落の恐れがあり、落下防止の養生テープを貼るなど応急処置が施された高欄=6日、鹿児島市の谷山中央7丁目
剥落の恐れがあり、落下防止の養生テープを貼るなど応急処置が施された高欄=6日、鹿児島市の谷山中央7丁目
 鹿児島市のJR指宿枕崎線谷山-慈眼寺の高架橋に設置している高欄(防音壁)の表面樹脂に剥落の恐れがある欠陥があったとして、JR九州と製造元の東レが既存高欄約8割の交換・補修工事に着手したことが9日、分かった。JR九州は南日本新聞の取材に「剥落事象が懸念される高欄の応急対策は実施済みだが、早期に工事を完了するよう努める」としている。

 JR九州は、同様の高欄を福岡、佐賀、大分の3県で使っており、剥落が懸念される箇所を交換・補修する予定。さらに東レは他の鉄道路線での使用を認め、鉄道各社に通知。交換工事の計画策定を進めている。

 JR九州によると、2021年5月27日、谷山-慈眼寺で高欄表面の樹脂部分157グラムが約6.3メートル下の遊歩道に落下する事故が発生。けが人はなかった。これを受け、JR九州と東レは原因を調べ、22年10月、「表面処理の不具合など製品の欠陥が原因」と結論づけた。同年12月、両社は剥落の恐れがある欠陥箇所の交換・補修を始めた。

 高欄は高さ約1.9メートル、幅約2メートル、重さ約150キロのパネルを中心に、計2424枚を延長約2.7キロの高架橋の両側面に取り付けている。JR九州は、このうち77%に当たる1871枚の交換・補修が必要と説明。「メーカー側(東レ)に責任があると考えており、費用はメーカー負担で行う」としている。東レは「運行の安全に影響がないことは確認しているが、JR九州や周辺住民に迷惑をかけ申し訳ない」と答えた。

 谷山-慈眼寺の高架橋は「谷山地区連続立体交差事業」の一環で市が主体となり整備し、16年3月に開業した。高欄設置費は約4億9400万円で、国が約2億4800万円、市が約2億1100万円を負担した。