400年続く伝統行事「くも合戦」存続の危機 市が事務局打ち切り表明 保存会「金銭も人材も不足。このままなら解散」
2023/03/10 21:15

加治木の伝統行事「くも合戦」
くも合戦は、戦国武将の島津義弘が朝鮮出兵の陣中で、兵士の士気を高めようとコガネグモを戦わせたのが始まりといわれる。「姶良市加治木町くも合戦保存会」が例年6月に開く大会には県内外から参加があり、見物客でにぎわう。新型コロナウイルス禍で2020年から中止が続いている。
保存会によると、会員は160人余り。会費や助成金をもとに大会や絵画コンクールを開くほか、次世代への継承のための学校訪問や、生息数が減少しているコガネグモの生態調査も実施している。
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くも合戦は元々、旧加治木町観光協会の主催事業だった。1991年に、行事の保存継承を目的に保存会が発足し、同協会から助成を受ける形で運営してきた。以後30年にわたり、事務局機能は旧加治木町役場や、市町村合併による姶良市誕生後は加治木地域振興課などが担当し、官民一体でくも合戦を観光資源に育ててきた。
保存会は21年8月、市側から、人手不足や業務を行政が担うのがおかしいとの外部指摘があったことなどを理由に「今まで通りに事務局を継続できない」と伝えられたとする。保存会は事務所設置や観光協会へ委託を検討したが、費用や窓口対応など人材の問題があり、解決策は見いだせなかったという。コロナ明けの大会開催を巡り、問題が改めて表面化した。
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一方、市側は、くも合戦が観光協会の行事の一つだったとし、「市が事務局をしていた観光協会の業務の一環として継続してきた」と説明。協会が一般社団法人化した20年度以降は、くも合戦保存会の事務は担えないと伝えてきたとする。また、同時期にくも合戦を担当していた加治木地域振興課の廃止も重なった。
ここ3年はコロナ禍で大会が中止されたこともあり、市商工観光課が事務を引き受けた格好。高山功治課長は「勤務時間外に、個人的にボランティアで協力してきた」と語る。
事務局の業務は、総会の資料作りや大会案内発送など50項目以上にわたる。別の伝統行事の保存会などとの公平性の観点からも「くも合戦保存会だけを特別扱いできない。今後もできる協力はするが、これまで通りは難しい」とする。
保存会は8日、湯元敏浩市長宛てに要望書を提出した。「我々の力不足」としながらも、市が長年事務局を担ってきた経緯を踏まえ、行政が支援する事務局体制の継続を訴える。できない場合は「解散せざるを得ない」とする。
吉村正和会長は「先祖から続く伝統行事を終わらせるのはふがいない。全国的に有名な伝統行事を残せるよう、市は支援を続けてほしい」と話している。
■加治木のくも合戦 直径1センチほどの棒の先で、コガネグモのメスを戦わせる伝統行事。大会開催の記録は大正時代にさかのぼり、現在は姶良市加治木町くも合戦保存会が毎年6月に大会を開く。1996年には「加治木のくも合戦の習俗」として、国の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択、報告書が作成された。保存活動は2018年、日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録された。
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