女性はキャリアアップできない? 「育児で残業できないと昇進コースから外れる」。30代女性は「マミートラック」と訴える

 2023/03/11 11:00
オンライン会議で営業活動を報告する女性職員ら=2月21日、鹿児島市名山町の鹿児島信用金庫
オンライン会議で営業活動を報告する女性職員ら=2月21日、鹿児島市名山町の鹿児島信用金庫
 経済分野のジェンダー(社会的性差)平等をみる上で、重視される指標の一つに「男女の賃金格差」がある。賃金に関する2021年の統計調査によると、鹿児島県内の基本給など所定内給与額は男性の28万8000円に対し、女性は21万8100円。75.7%にとどまっている。

 格差の背景には、女性は結婚や出産のタイミングでキャリアが中断されがちで、平均勤続年数が短いことが挙げられる。男性に比べて管理職が少なく、非正規雇用が多いことも大きく影響している。

 国は改善を促すため、従業員300人以上の企業に男女の賃金差の公表を義務付けた。23年度からは公務員も公表される。

 ジェンダー問題が専門の大崎麻子関西学院大学客員教授は「男女の賃金格差は企業の中に潜む間接的な差別を可視化する」と指摘。「投資家や求職者は企業を評価する材料として、経営者が解消へ向けてビジョンを示し実行するか見ている」と取り組みの必要性を強調した。

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 性別にかかわらずキャリアアップできる環境をどうつくるか。鹿児島の民間で働く約2000人が回答した南日本新聞のアンケートからは、固定的性別役割分担が足かせになっている現状が垣間見える。

 鹿児島市の管理職男性(52)は「既婚女性は転勤させられない、というバイアスが壁になっている」。同市の30代女性は「残業できない人にはキャリアアップの機会も重要な仕事も回ってこない」と指摘。育児との両立のために主要な業務や昇進から外れる「マミートラック」を訴える。

 回答では「易しい仕事を女性に回す慣例がある」(同市60代男性)と女性を“戦力”とみていない現状がある一方で「女性管理職の割合を高めるため、男性より早く昇進させている」(同市50代男性)という不満の声も目立った。

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 鹿児島信用金庫(鹿児島市)は21年、男性のみだった営業業務を担当する女性チームを立ち上げた。従業員の約4割を占める女性の仕事内容を広げ、組織全体の営業力を強化する狙いだ。22年から、支店の女性職員が周辺の家庭や商店への訪問営業を始めている。

 商品提案の仕方や訪れるタイミングなどは、本部のチーム員が細やかに助言しサポートする。2月21日にあった本部と各支店を結ぶオンライン会議では、参加者が「自分なりの説明の仕方を習得した」など手応えを語った。

 中俣義公理事長(76)は「今は女性に営業に慣れてもらう段階。将来は女性を営業や融資業務に、逆に男性を窓口業務に配置したりして、性別にかかわらず力を発揮してもらえるようにしたい」と話した。

(連載「働く 平等ですか?かごしまの職場から」より)