中小企業では男性の育休取りづらい…実は「雇用側にも利点」あるんです
2023/03/15 11:00

妻の莉歩さんと長女を抱く宮薗航大さん。「育休を取って愛情がさらに深まった」と話す=2月11日、出水市
医療法人クオラ(鹿児島県さつま町)の理学療法士、宮薗航大さん(30)は昨夏長女が生まれ、3カ月間の育児休業を取った。男性の育休取得が9割以上の同法人でも3カ月は過去最長。新型コロナウイルス禍で多忙を極める中、葛藤した。
勇気を出して上司に申し出ると「貴重な機会だから」と快諾された。「ホッとした」と振り返る。
育休中はおむつ替えや寝かしつけ、食事づくりを担った。夜中の授乳で睡眠不足の妻莉歩さん(30)が昼間に休めるよう気を配った。
いちき串木野市で看護師をしている莉歩さんは1年間の育休中。「夫婦一緒に子どもの成長を見守れたことは一生の宝物」と笑顔を見せた。
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労働条件の2021年度全国調査では、男性の育休は2週間未満が半数を占め、短い傾向がある。県の同年度調査によると、男性の取得率は17%と過去最高となったものの女性(93%)に比べて低い。中小企業はさらに下がり、県中小企業団体中央会の22年度調査では男性9%、女性正社員でも22%にとどまる。
南日本新聞が県内の民間で働く約2000人に実施したアンケートでは、男性から取得しづらい実態に悩む意見が寄せられた。
将来、育休を希望する大隅半島の男性(32)は「中高年の管理職は『育児は母親の仕事』という意識が強い。職場に若い社員が少なくしわ寄せがくる。深夜の残業も多い」と懸念する。「そもそも会社に男性の育休制度がない」と訴えた鹿児島市の30代男性もいた。
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働き方改革コンサルタントの渥美由喜さん(55)=大阪府=は、男性の育休は雇用側の企業や団体にも利点があると指摘する。不在のカバーが業務効率化のきっかけになる点や若い世代に就職先としてアピールできることを挙げる。
渥美さん自身もかつて育休を取得した。家事や育児を通じ、物事を同時並行でこなす力が身に付いたという。「マネジメント力も確実に高まる。本人もパートナーも職場も、皆にとって良い」と促す。
鹿児島市春山町の永田鋼管工業は、プラント工事などを扱い、約20人の男性社員が働く。昨年、同社で初めて2人が1カ月の育休を取った。制度を周知するため、事前に社員研修会を実施。業務は互いにカバーし、トラブルはなかった。
何より育休取得者の妻たちが喜んだ。永田廣樹社長(49)は「社員のやりがいにつながる。今後もしっかり進めたい」と話した。
(連載「働く 平等ですか?かごしまの職場から」より)
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