人材流出県に変化の兆し? 女性・子育て世代が働きやすく…職場を見直すと県外出身者の採用増える

 2023/03/18 11:00
業務連絡用のスタンプを作った梅沢健太さん=2月24日、志布志市
業務連絡用のスタンプを作った梅沢健太さん=2月24日、志布志市
 鹿児島市の20代女性は大学院を卒業し、この春、関西への就職を決めた。県内を選ばなかったのは、社会的性差(ジェンダー)の状況が自分に合わなかったからだ。

 生まれ育った鹿児島は家父長制の考え方や「女は1歩下がって男を支える」という風潮が根強く、息苦しさを感じてきた。女性活躍に力を入れる企業や、やりたいことができる職場にも出合えなかった。

 就職活動では、都市部の会社は女性リーダーや男性育休の取得状況などを説明してくれた。一方、地方の企業からは親の職業などを尋ねられた。

 女性は「入り口から違った。県内企業も福利厚生や女性活躍の実績を示せば、地元に残る若者はいるはず」と話す。

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 上智大の三浦まり教授(政治学)らがまとめた2023年の都道府県版ジェンダーギャップ指数では、鹿児島の経済界がジェンダー平等に届かない実態が改めて浮き彫りになった。指数は1に近いほど平等だが、社長数の男女比は0.144と全国30位。役員や管理職数の差も大きかった。

 国の22年報告によると、転出が転入を上回る転出超過は、鹿児島県は女性が1844人で男性の約4倍に上った。同じ状況の他県では、若い女性が男性優遇の風潮を敬遠しているとみて、対策を取る自治体もある。

 南日本新聞が民間で働く2000人に聞いたアンケートでは「鹿児島は男尊女卑」との回答が相次いだ一方、女性の力が必要と訴える経営陣の声もあった。霧島市の50代男性は「人手不足で、老若男女を区別しては事業が成り立たない」と回答した。

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 医薬品開発受託の新日本科学(鹿児島市)は、子育て層が働きやすい環境づくりに取り組んでいる。女性が改善要望を出すための委員会を設けるなどして、妊娠や出産で辞める社員はほぼいなくなった。

 企業姿勢が知られるようになったこともあり、23年の採用予定者145人のうち、4分の3は県外出身者が占める。長利京美総務人事本部長(57)は「採用力向上につながっている」と強調する。

 6人でピーマンを栽培する志布志市の「ファーマーズ・ヴィラ・ウメ」は子育て中の従業員に配慮。「子供が熱が出たため休みます」など、無料通信アプリLINE(ライン)で使えるスタンプを作った。毎月のように面談をして、賞与の支給時期などの要望も吸い上げている。

 職場の様子をネットで発信すると、求人への応募が増え、人材確保に効果があった。梅沢健太代表(40)は「費用をかけずにできることがある。性別に関係なく従業員と向き合っていきたい」と話した。

(連載「働く 平等ですか?かごしまの職場から」より)