「九州に類例ない」防御用の大型土坑見つかる 16世紀に築城、鹿児島県阿久根市の新城跡

 2023/03/18 11:34
新城跡で見つかった大型土坑(奥)と通路跡(手前)=阿久根市山下(県文化振興財団埋蔵文化財調査センター提供)
新城跡で見つかった大型土坑(奥)と通路跡(手前)=阿久根市山下(県文化振興財団埋蔵文化財調査センター提供)
 鹿児島県文化振興財団埋蔵文化財調査センターは17日、阿久根市山下にある中世の山城跡「新城(しんじょう)跡」で、深さ3メートル、一辺12メートルの方形の大型土坑(どこう)を備えた防御施設を発見したと発表した。城の出入り口に相当すると考えられる。専門家は「標高の低い台地に大きな穴を掘り防御施設とする構造は、九州では類例はない。全国的にも珍しいのでは」と話している。

 新城跡は標高36メートルのシラス台地の上にある。大型土坑には、深さ約2.5メートル、底幅35センチの通路がつながっている。複数人が往来できないように狭く、緩やかに蛇行しており、守りやすさを重視していることが分かる。また、土坑の上は曲輪(くるわ)だったと考えられ、建物があったことを示す柱の穴や、炉の跡が見つかっている。

 16世紀、一帯を治めていた阿久根播磨守(はりまのかみ)良正が築城したとされる。調査を指導した、鹿児島国際大学の三木靖名誉教授(85)=城郭史=によると、文献資料では戦闘があった記録はない。

 三木名誉教授は「標高の低い場所の城は攻められやすいが、狭い通路や大型の土坑は弱点を補うのに効果的な仕掛け」と指摘。また、同時期に一帯の中心地だったと考えられる北山遺跡や、別の山城があったとされる愛宕山とも近く、「一体的な防衛を目的とした可能性もある」とみる。

 新城跡は、2022年度の南九州西回り自動車道建設に伴う発掘調査で見つかった。

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