10年で定数111も減ったのに…地方議会のなり手不足が止まらない 「代表」不在のツケは住民に? 鹿児島
2023/03/22 08:30

通りに並ぶ市議選立候補予定者の看板=2月、枕崎市(画像は一部加工しています)
前回2019年の選挙は定数割れ寸前だった。勇退を予定した現職1人が締め切り直前に届け出たため回避できたが、1949(昭和24)年の市制施行以来初の無投票に終わった。有権者は民意を示せず、立候補者は考えを伝える機会を失った。「当選したのに手放しで喜べなかった」と議員の一人は振り返る。
「有権者が議員を選べない状況はおかしい」。危機感を持った市民が問題提起したのが議員の数。上釜芳明さん(81)ら有志6人が21年5月、定数の適正化を求める陳情を市議会に提出した。これを機に議会内で1年間議論し、22年9月、今春の市議選から定数を2減して12にする条例改正を全会一致で可決した。
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同市議会の中には前回選挙の直後から、候補者を探す議員もいた。だが、意欲を示した40代の男性会社員は家族の猛反対で断念。地域活動に熱心な若手経営者は、兼業できない市の請負業者と分かった。こうした実態が定数削減の受け入れを加速させたとみられる。
議員にとっては競争激化を招く「苦渋の策」だ。それでも自治体の経費節減にもなることから踏み切る動きが全国的に広がる。同市議会が21年、市民千人に実施した議会アンケートでも回答者の半数が「定数を減らすべき」とした。
このアンケートでは、議員のなり手不足の原因も尋ねた。回答は多い順に「選挙の負担」「議会に対して無関心」「議員の仕事に魅力がない」。市議の一人は、なり手不足を定数削減だけで解消するのは難しいという見方を示し、「若い世代が議会に興味や関心を持つ取り組みを進める必要がある」と訴える。
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県内43市町村の直近の議員選は同市のほか、宇検村も無投票。前回無投票のさつま町と錦江町は、どちらも21年の選挙で投票は行われたが、立候補者は定数を1人上回っただけだった。なり手不足はあちこちの自治体で表面化している。
議員定数は平成の大合併の影響も受けてきた。総務省と県市町村課の資料を元に12年4月と22年4月末を比較すると定数は19市12町の計111減った。このまま「代表」が減り続ければ、有権者の議会への無関心に拍車がかかりかねない。
鹿児島大学の平井一臣教授(政治学)は「定数が減れば、それだけ行政の監視機能や地域の声をすくい上げる力は弱まる」と懸念。「身を削る改革以前に、議員が資質を高め、有権者への積極的な情報発信など実質的な議会改革を進めることが重要だ」と指摘する。
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4年に1度の統一地方選を前に県内市町村議会の現状を見つめ、課題を考える。
(連載「地方議会の今 2023かごしま統一選」より)
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