保育料無料で年70万円の負担減、奨学金返還を支援…市独自の少子化策で「10年後に人口増」は絵空事じゃない?

 2023/03/24 14:00
子や親同士の交流の場になっている子育て世代活動支援センター「ぷれぴか」=都城市中町
子や親同士の交流の場になっている子育て世代活動支援センター「ぷれぴか」=都城市中町
 宮崎県都城市が「10年後の人口増加」を市政の目標に掲げた。実現に向けて2023年度から、10万人を超える九州の自治体で初めて保育料の無料化に踏み切る。交通網整備の進展に伴い好調な企業立地の追い風も受け、人口減少にあらがう市独自の取り組みを追った。

 「無料なら2人目も早めでいいかな」。市子育て世代活動支援センター「ぷれぴか」を長女(1)と訪れた公務員大原美華さん(26)が語った。育休取得中で給料が減り物価高騰で家計が厳しい分、保育料の無料化が魅力的に映るという。

 市は国が対象とする枠を拡大、3歳未満の第1子から無料とする。平均的世帯で2人預けると年約70万円の負担減になると見込む。このほか、23年度から中学生以下の医療費と妊産婦健康診査費も無料とする。

 現在約15万8000人の人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計では40年に約13万2000人に減る。しかし、市は女性1人が生涯に産む子の推定人数「合計特殊出生率」が32年には0.18ポイント上昇して1.90となり、以降は人口増加に転じて42年は現在の規模まで戻ると見通す。

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 達成年まで示した人口増加目標について、池田宜永市長は「絵空事とは思わない」と語る。根拠に挙げるのが、転入と転出の差である社会動態の増加傾向。ここ数年は2桁の減少で推移していたが、新型コロナウイルス禍で地方移住の需要が高まり、22年は382人の増加に転じた。

 市は「都城志布志道路」効果も大きいとみる。24年度に志布志市と直通でつながる都城インターチェンジ(IC)近くの工業団地は完成前に完売した。22年まで10年間の企業立地は140件を超え、12年までの50年間分(125件)を既に上回った。

 さらに今年2月には、都城商工会議所などとU・I・Jターン促進に取り組む協定を締結。関係機関・団体と連携して働き口の確保に力を入れている。

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 市は3月議会で可決された23年度予算に、移住応援給付金の新設や奨学金返還支援拡充、新たな工業団地整備の費用なども盛り込んだ。同年度には、子どもや家庭に対応する業務を集約する「こども部」や「人口減少対策課」を新設する組織改編も行う。

 政府が掲げる「異次元の少子化対策」の地域版とも言える取り組み。池田市長は「国より一歩も二歩も先に行けば、背中を押してもらえる。人口減が止まるだけでも他の自治体との差はどんどん出てくるだろう」と先を見据えた。